ジェンダー投資とは、意思決定プロセスに意図的にジェンダー視点を組み込むことで、ビジネス、社会、環境、投資成果の向上を目指す投資です。ジェンダー視点を組み込むことで、リスクの軽減・機会の獲得につながるとともに、女性主導及び女性に価値をもたらすビジネスに対し、より多くの資本を投入することが可能となります。これまでに発表された調査によると、女性への投資は社会的意義を持つだけでなく、収益面でも優れているといわれています。
・女性の労働参加率や賃金は男性より低く、女性起業家は必要な事業資金にアクセスできていないのが現状(UN Women)。しかし、女性は男性より多くの収入を家族や子どもに投資するため、女性に投資することは社会的インパクトの創出につながる(国際連合)。
・イノベーション部門において女性を活用している企業は、女性顧客のニーズを的確に把握することにより、実施していない企業より144%も高い事業成功率を実現している(センター・フォー・タレント・イノベーション(CTI))。
・男女賃金格差や金融アクセスにおける格差、就業機会や社会参加の機会等における格差など、ジェンダーによる偏見が無くなり労働における男女平等が達成されれば、2030年までに世界のGDPは約28兆米ドル増加すると予想されている(マッキンゼー)。
女性および女性を支援する事業の金融アクセスを向上させ、ジェンダーの平等を推進すると同時に地域全体の経済発展に寄与することを図る運用中のジェンダー投資商品は少なくとも計192本存在し、そのAUM総額は77億米ドルに上ります(2020年7月発表当財団調査)。
成長をけん引したのは非公開市場ファンドで、2020年7月発表のWharton Social Impact Initiativeのプロジェクトセージ3.0レポートによると、非公開市場ジェンダー投資ファンドの資本金調達総額は48億ドルで、同レポートの前年度の22億ドルから2倍以上に増えています(Project Sage 3.0 なお、同レポートデータは2020年3月実施のオンライン調査から得た2019年12月31日現在のものです)。
我々が実施した、女性への経済的エンパワーメントに関する調査によると、東南アジアにおける女性の職業のうち「起業」が最大シェアを占めています。また、女性の経済力の高まりは国や地域の経済成長に大きく貢献しており、女性の零細及び中小企業(SME)は東南アジアのGDPの30-53%を占めています。一方、アジアにおいて女性がビジネスを行う上で金融アクセスが大きな問題となっていることなどが判明しました。
これを受け、2017年、笹川平和財団は、ジェンダー平等の推進と東南アジア地域の女性と女性起業家の支援を目的とする「
アジア女性インパクト基金(AWIF)」を創設しました。アジアの財団として、また国内でも初めてのジェンダー投資ファンドであるAWIFは、100億円の投資を通じ、投資収益とジェンダー課題解決の双方の実現を目指しています。