【開催報告】ジェンダー投資研修 From “Why” to “How”
笹川平和財団は、アセットオーナー投資家(LP)に向けたジェンダー投資実践のための研修プログラムを開催し、インパクト測定・管理(IMM)の枠組みを発表しました。
この報告書は、オランダのデータ会社エクイリープが独自の19項目の基準を用いてアジア太平洋地域の1181社のジェンダー平等推進度を分析し、市場ごとの傾向を分析したものである。
近年の上場企業は様々な非財務諸表について世界各地の調査機関から開示を求められており、調査疲れしている、と言われることもある。そんな中でもエクイリープの調査が重要なのは、世界の機関投資家に使われているためだ。
2020年12月18日、日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、アメリカの投資調査会社モーニングスターとエクイリープが共同開発したジェンダー・ダイバーシティ指数を採用した。当初、3000億円程度を投資すると発表している。つまりエクイリープの調査は、単なるランキングに留まらず、企業が機関投資家から選ばれるための指針なのである。
ジェンダーの観点から投資家に選ばれるため、日本企業がやるべきことは2つある。
1つは人員構成のジェンダーバランスを取ることだ。これは必ずしも男女半々を目指すことを意味せず、どの職位でも片方の性別の人が6割を超えないようにすればいい。CEOのようなトップマネジメントや取締役に女性を増やす必要性は言うまでもない。
報告書は15頁で日本の現状と課題を分析する中で次のように記している。
""There were more CEOs named Hiroshi (14) than female CEOs (4). "
つまり、女性CEOより「ヒロシ」という名の男性CEOの数が多いということだ。日本の上場企業がいかに男性リーダーに偏っているかを端的に示している。
2つめは男女賃金格差を開示することだ。エクイリープが調査対象とした上場企業に関していえば、男女賃金格差是正についての方策を発表していたのはソフトバンクだけだった。
男女間賃金格差の情報開示を求める動きは、日本の政策とも合致する。政府は2022年6月3日、「女性活躍・男女共同参画の重点方針」、いわゆる「女性版・骨太の方針」を決定した。ここで最初に言及されているのが「女性の経済的自立」であり、男女間賃金格差への対応が取るべき施策として挙げられている。
特に、男女が同じ組織で働いていても、女性が男性と比べて低賃金になりがちであることを踏まえ、男性の賃金に対する女性の賃金の割合を開示することを義務化すると共に、有価証券報告書についても、同内容の開示を義務付けることになった。有識者で構成する内閣府男女共同参画連携推進会議は、7月13日に金融業界の有識者や投資家からなる「男女間賃金格差情報開示チーム」を発足、男女別賃金の中央値を比較すること、男女格差の要因分析を行うことなどを提案している。
エクイリープが企業分析に用いている基準は、管理職や役員など意思決定層の女性比率に留まらない。生活給の補償や男女賃金格差の開示、柔軟な勤務制度、人材採用や育成、加えてサプライチェーン全体への配慮や人権対応を見る。つまり、企業活動全般に人権尊重に基づくジェンダー平等が実践されているか否かを計測する。最近、注目が集まっている「ビジネスと人権」の観点も含む包括的な調査なのである。