No.0056

2018年03月15日

日米豪印で共同演習を/
秋元一峰氏(笹川平和財団海洋政策研究所 特別研究員)インタビュー(3)

――笹川平和財団は2月23日に国際会議「インド洋地域の安全保障」を開き、今後提言もまとめる予定です。その草案作りのメンバーでもある秋元さんから提言のポイントをお聞かせください

秋元氏 提言は笹川平和財団のインド洋地域の安全保障事業の一環として、日米豪印4カ国の民間研究機関の協力のもと、「インド洋地域の安全保障に関わる4カ国委員会」を組織し、代表委員4名の名のもとに、研究成果を提言としてまとめることになっております。提言はあくまで代表委員が決めるものであります。草案作りに携わっている立場の者としてご紹介しますが、提言は、日米豪印4カ国の外交面での連携、経済分野での協調と地域における海賊対策、テロ対策、自然災害などへの支援、そして防衛・安全保障での協調の3分野に分けられることになるでしょう。

――外交はどのような内容になりますか

秋元氏 インド洋はグローバル経済活動の回転軸になりつつあります。紅海、地中海を通って大西洋につながりますし、マラッカ・シンガポール海峡を通って太平洋につながります。さらに、北極海航路が通常ルートとして拓ければ、ユーラシア大陸をぐるりと回るような海上の経済活動ベルト、言わばユーラシアブルーベルトができることに期待が膨らみます。ですからインド洋地域だけを見るのではなく、インド太平洋という大きな視野で見て、政治と経済の共通の理念をもつ4カ国が協力し、いろいろなレジーム、地域的な枠組み、取り組みを構築していく必要があるということが提言されると思います。

インド洋にはSAARC(南アジア地域協力連合)など、インドが主導する幾つかの地域多国間枠組みがあります。それら地域的枠組に、いかに関与するかも大事な課題となるでしょう。

――経済分野はどうでしょう

秋元氏 健全な経済活動、確かな技術といったものでインド洋の経済圏を活性化させることの重要性が謳われるものと思います。

――軍事、安全保障は

秋元氏 インド洋地域を不安定化させないために4カ国が協力し、安定的で好ましい安全保障構造を構築していく必要があることを踏まえた提言となるでしょう。日本には専守防衛という国是はありますが、インド洋シーレーンの安定確保の重要性に鑑みれば、自衛隊のインド洋での行動能力を高めていくことの必要性も提言されるでしょう。

潜水艦の行動能力は艦隊全体の作戦に大きな影響を与えます。インド洋は非常に広い海域ですので、原子力潜水艦が有効になってきます。日本は在来型潜水艦しか保有していませんが、国際会議では、航続距離が長く長期間の行動が可能となる原子力潜水艦の導入についても、その必要性について意見が交わされていました。

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インドは伝統的な非同盟中立の立場を維持する人もいれば、米国との安全保障協力が必要だとの考えを持つ人も多数います。オーストラリアは、中国との経済的な結びつきが大きいところから、中国との安全保障上の対立は避けたいところがあるでしょう。米国については、中東などに加えてさらにインド洋でも軍事力を増強することには国内で抵抗もあるでしょう。日本は専守防衛という面から、インド洋にまで自衛隊を展開させるのかといった議論は起こるでしょう。

防衛・安全保障に関しては、4カ国による合意形成の場を作ることが大事だと思います。4カ国の協力がどの程度実現するかは別にしても、協力の姿勢を示すということ自体が大事なのではないかと個人的には思慮します。

協力の姿勢を示す最も具体的な施策は4カ国共同演習でしょう。インドと米国が主導している海上共同演習「マラバール」に、日本も昨年加わりました。国際会議では、これにオーストラリアも招聘することの適否について意見が交わされていました。

4カ国の安全保障協力は、事態対処的なものではなく、予防的な安全保障措置を講じていくことが重要であるとの認識が共有されておりました。そのような措置は、インド洋の安全保障環境の安定化を促すものとなるのではないでしょうか。

「パシフィック・パートナーシップ」の企画で、米海軍と海上自衛隊が共同で、南太平洋や東南アジアの国々を回って医療支援などをしています。オーストラリアも参加しています。このような活動も予防的安全保障措置であろうと思慮します。

――民間がインド洋の安全保障問題に取り組む意義を、どうお考えですか

秋元氏 これはまったく私の考えですが、当初からトラック1.0(政府レベル)の場で多国間の安全保障協力の在り方を議論するのはハードルが高いところがあるのではないでしょうか。先ずはトラック2.0(民間レベル)の場で嚆矢(最初の矢)を放つのが良策と考えます。

(聞き手 特任調査役 青木伸行)

秋元一峰(あきもと かずみね)氏の略歴
元海将補。1967年に千葉工業大学を卒業、海上自衛隊幹部候補生学校に入校。翌年、幹部自衛官に任官。米海軍第7艦隊哨戒偵察部隊連絡幕僚、海上幕僚監部調査部情報班長、海上幕僚監部防衛部分析室長、海上自衛隊航空群首席幕僚、防衛研究所主任研究官などを歴任。2000年に退官し、海洋政策研究財団(現笹川平和財団海洋政策研究所)の特別研究員となり現在に至る。海軍戦略、海洋安全保障に関する論文等多数。

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