No.0057

2018年06月22日

「知的対話:日印パートナーシップの深化が生み出す可能性と役割」インタビュー
 モンテック・アフルワリア氏(インド中央計画委員会 前副委員長)、ラジャット・ナグ氏(アジア開発銀行 前事務総局長)、ハリンダー・コーリー氏(センテニアルグループインターナショナル会長)

笹川平和財団は、2018年1月16日の知的対話セミナーにインドから3人の学者と専門家:モンテック・アフルワリア氏(インド中央計画委員会前副委員長)、ラジャット・ナグ氏(アジア開発銀行前事務総局長)、ハリンダー・コーリー氏(センテニアルグループインターナショナル会長)を招いた。セミナーに先立って行われたインタビューで、今後十年以上にわたる世界的な動向とアジア経済についての見識を簡単に語っていただいた。以下はその概要である。

2018年以降の世界的な動向

コーリー氏 2018年は世界経済の安定が見込める。しかし、その表面的な安定性の裏では多くの変化が起こっている。世界経済の重心は、新興市場が勢いを増し続けるアジアにさらに移行する傾向にあり、これら新興市場では人口も増加している。アジアとアジア経済全体の長期にわたる将来を左右し、率いていくのはそれらの新興アジアの国々であろう。発展途上故の追いつき成長が追い風となり、それら新興市場国は、先進国に比べ非常に急速な成長率を遂げる。人口増加、より潤沢な労働力、先進国の生産効率の高い手法の採用、それによる生産性の向上、高い貯蓄率と非常に高い投資も相まり、それらの国々のGDPと一人当たりの国民所得は確実に高くなる。このような観点から、今後数十年の間に現在のGDPのランク付けは急激に変化すると思われる。例えば、インドは、現在から2050年にわたり平均して年6%以上成長すると予測され、2050年までには、インドの一人当たりの国民所得は幾倍にも増加し、現在世界第7位のインド経済は、中国に続き世界第2位になるだろう。

今後三十年、アジアが好況である潜在性は高く、アジア経済の見通しは明るい。しかしながら、経済的な繁栄とは裏腹に、新たな問題とともに永続的な問題は依然として存在する。その中には、地政学的な問題、貧富の差、気候変動、汚染、都市化と過密化、新中間層の台頭による政治情勢の変化などがある。世界経済の中心がアジアへと移行する中、アジアは世界的な問題において、より大きな役割を果たし、いっそう重大な責任を負わねばならない。

インドASEAN関係と今後の日本の役割

ナグ氏 インドとASEAN諸国は、文化的、歴史的な深いつながりを背景に、戦略的パートナーを構築してきた。「Look East」政策以来、インドは印・ASEAN関係の重要性への認識を益々強めてきており、インドとASEAN諸国の投資拡大と貿易関係の強化の推進等、経済的に大きなシナジーが生み出されている。2009年に締結されたインドとASEANのFTAは両者間の貿易を顕著に増大させたが、その協力関係はFTAに基づく協力関係の潜在性からすると、未だ十分ではない。

アメリカの経済力の衰退と、PPPでは直にアメリカを追い抜く中国の台頭は、世界の力関係の転換を促し、国際情勢の多岐にわたり影響を及ぼしている。アジアにおいては、アジアの貿易要路である南シナ海をめぐる問題のように、紛糾の要素をはらむ様々な問題も浮上している。南シナ海は、ライフラインとしての貿易においてインドとASEAN諸国が依存する、東西に走る大動脈である。それらの国にとって、貿易ルートの保護と国の安全保障は切り離すことのできない問題だ。
 他方、アジアをつなぐ地域間の連結強化という意味では、これまでのところ、ASEAN、BIMSTEC、メコンガンガー協力など、大小の地域協定が結ばれている。

インドと中国が、若い労働力の育成とインフラ整備に力を注ぎ躍進する一方で、日本は、人口減少、出生率の低下、高齢化社会が抱える諸問題に直面し、アジアで初めて少子高齢化に見舞われている。しかし、日本の経済力、豊富な資金、先進技術が今後短期間で衰えるとは考え難い。コーリー氏が指摘したように、日本は2050年においてもGDP首位5カ国に名を連ねるだろう。将来における日本によるアジア諸国の発展支援は、それらの国々との持続可能な関係性の構築という視点でなされねばならない。開かれた地域主義がアジア地域繁栄の重要な要素であることは明白である。保護主義や「敗者対勝者」が生まれるやり方が追求されてはならない。ともに東南アジアと北東アジアの玄関口にある民主主義国家として、インドと日本が推進する協力は、アジアの繁栄にとって今後も重要な意味を持つ。

将来のインド経済と日本

アフルワリア氏 現在から2050年までのインドのGDP成長率は、幾分上下変動が加わったとしても、約6%を概ね維持できると予測される。これは、将来、インドの経済規模が日本の経済規模を超えることを示唆している。インド経済は活力がある伸びゆく経済であり、先進国に追いつくべくさらに成長する潜在性を秘め、他国からのより多くの投資を必要としている。一方、日本では余剰資金と先進技術がありながら、高齢化と人口減少のため、その潜在的な市場を国外に求める必要性に迫られている。インド・日本両国は、必要性に基づく相互補完的な協調関係を更に深化、発展させることができる非常に高い潜在性を有している。先頃、インドと日本が、今後数年にわたり日本からインドへの投資を促進する、投資推進のためのロードマップと覚書を交わしたことは、協調関係の深化のひとつの布石であると考える。

グローバル化の負の側面あるいはグローバル化による内政政策の失敗という論調が世界的にクローズアップされるなかで、内向きの価値観、「自国第一主義」的な世論や指向が高まっている。インド太平洋の主要な貿易ルートの両端に在するインドと日本が、開放経済の原則を保持することは両国にとって共通の利益であり、その協力は双方に明白な利益をもたらすであろう。今やWTOの交渉が膠着状態に陥っている中、RCEPでは、従来の交渉とは幾分異なる貿易交渉が進展する明るい兆しが見られる。そこにおいて、日本はRCEP加盟国間の同意形成に大いに貢献することができる。

また日本とインドは、安定したエネルギー供給の確保においても有意義な協力を行うことが可能である。そのような協力の一端として、先頃、両国は民生用原子力協力協定に署名した。他に、太陽エネルギーとそれに関連した技術、特にバッテリー系の技術における協力も期待されている。これらすべての分野において、インドは「Make in India」政策に基づき外国資本の投資を歓迎し、広大な市場を日本に提供できるだろう。

笹川平和財団に期待する役割

アフルワリア氏 笹川平和財団のような民間組織は、問題のより幅広い理解の促進に大きな役割を果たすことができる。昨今の世界情勢において、和平を確立するには、狭義の平和-紛争解決-を超えた幅広い視点に立ち、共栄のための土台を正しく設定する必要がある。笹川平和財団は、そのような分野における試みを、取り組むべき課題に加えていただきたい。

ナグ氏 コーリー氏が指摘した点に加え、笹川平和財団のような組織は、インドと日本のある種の対話でシナジーの醸成を助ける大きな役割を果たし、様々な役割を担う人々を結集させることができるだろう。

コーリー氏 世界の政治と経済情勢が変貌する現代において、笹川平和財団は、政府の枠組みにとらわれず、アジアの安定と安全保障の促進に向けた、革新的な思考と方策の推進役かつ橋渡し的存在として、重要な役割を果たすことができる。笹川平和財団は、革新的な若者も含めアジアの人々を団結させることができる。

ASEAN 東南アジア諸国連合
BIMSTEC ベンガル湾多分野技術経済協力のための構想
FTA 自由貿易協定
GDP 国内総生産
PPP 購買力平価
RCEP 東アジア地域包括的経済連携
TPP 環太平洋パートナーシップ協定
WTO 世界貿易機関

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