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SPF NOW

中国経済セミナー登壇者インタビュー Vol.1
許思涛氏(デロイト中国チーフエコノミスト)〈後編〉

笹川日中友好基金


2022.05.25
笹川日中友好基金は、中国の米中新視角基金会(周志興主席)の協力を得て中国経済セミナーシリーズ(全3回、2021年12月~2022年2月)を開催しました。本セミナーの第1回目に講師としてご登壇頂いたデロイト中国チーフエコノミストの許思涛氏に日本の経済政策、中国の内政、投資家の関心事等についてお話を伺いました。(2022年4月12日収録)
聞き手:宋看看(上海東方テレビ東京支局長)
― 現在の円安はまだ続くとお考えでしょうか
 現在の円安は一時的なものだと思います。私にとって今回の円安は予想外でした。何故なら今の世界情勢のように戦争が起こるたびに投資家は日本円やスイスフラン等を購入しリスクヘッジを行ってきたからです。私は今回の円安はイレギュラーなもので、日本円はすぐに反騰すると思っています。
 
― 日本銀行の黒田総裁は今回の円安は日本経済に前向きな影響のある、プラスの円安だと言っています
 もちろんそう言って良いと思います。何故なら日本は中国と同じく債権国であって、債務国ではないからです。他国にお金を貸している方であって、お金を借りているわけではありません。自国の通貨の価値が下がったからと言って、海外に多くの資産をもっているので特に困ることはありません。
 第二に日本は長年にわたりインフレ率を低く抑えており、通貨価値の下落は特に悪いことではないので黒田総裁の発言はもっともだと思います。
 しかし日本が世界第3位の経済大国である以上、これ以上の円安が進んだ場合、中国の中央銀行の意思決定に影響を及ぼす可能性がないとは言い切れません。為替相場というのは絶対価格ではなく、通貨間の相対価格だからです。
 総合的に見て私は今の日本円のレートは低すぎるレベルにあると思っています。
 
― 日本のメディアが最も関心を寄せているのは先日の全人代で発表された中国の経済成長目標ですが、5.5%前後という成長目標は予想外のものだったのでしょうか?
 私の想像以上の数字でしたが、完全に予想を超えたとも言いきれません。ここ十年私たちは経済の持続可能な成長速度はどれくらいかを議論してきたので5.5%は高めの数字だと言えます。持続可能な成長速度というのは政府による経済刺激策を必要としない自然成長。例えば企業の自然な投資、消費者の自然な需要増、輸出関連企業の自然な経済活動の結果などを足し合わせたものが持続可能な成長速度と言えます。
 ここでは持続可能な成長速度が具体的にどれくらいかには触れませんが、中国の消費者の需要増と中国の輸出関連企業の経済活動によって、毎年3.5%から4%の自然成長速度になるのは確かです。5.5という数字は非常に高く聞こえますが、3.5から4の自然成長の上に、更に政府の経済投資を加えるなら決して驚くような数字ではありません。我々は5.5前後と言っているだけです。
 更に付け加えるとアジア開発銀行はヨーロッパの戦争を踏まえ今年のアジア経済に対する再予測を行い、中国の経済成長予測を5%にあらためました。ここでは5か5.5前後であるかは大して重要ではありません。中国経済にはまだ比較的大きな成長の余地が残っていることの方が重要なのです。
 
― ウクライナ紛争によって石油が値上がりする一方、不動産市場も停滞しています。同時に中国では非常に厳格なコロナ対策が講じてられているため、この5.5%という経済成長目標の達成は難しいのではないかと一部日本のメディアは報じています
 私たちは5.5という数字にこだわる必要はありません。内陸地区はやや遅れているものの沿海地区を中心に中国経済は発展を遂げ、サービス産業の占める割合がとても大きくなっています。サービス産業の比重が大きくなってくると経済成長の1ポイントごとの重みと雇用にさほど明確な関係が見られなくなるからです。
 かつて中国経済の勃興期に政府は大きなインフラプロジェクトを通じて投資を刺激し、雇用を創出してきました。しかし今日、このような手法について議論し直してみる必要があると思います。大きなプロジェクトは多くの投資をもたらしますが、必ずしも多くの人の雇用を生み出すわけではないからです。
 中国経済の成長目標5.5の達成には大きな課題があることも確かです。特にヨーロッパの戦争、更に最近の厳格なコロナ感染対策、とりわけ上海とその周辺地区での厳格な管理対策など課題があります。少し前の深圳でもそうでしたが、中国経済で最も活力がある長三角と珠三角(訳者中:深圳、広州などを含む珠江デルタ地帯)で物流に大きな影響が生じ、企業のサプライチェーンも打撃を受けました。人の移動さえ難しい状況です。
 中国経済は今年後半どうすべきかを考える上で、二年以上にわたるコロナ禍の中での我々の経済活動と成果を踏まえ、政策が需要の最末端である消費者と直接向き合うことが重要だと感じています。
 
― 日本メディアは中国の学者がどのように安倍内閣の経済政策を評価しているかに関心をもっています
 アベノミクスは三本の矢に要約されています。
 一本目の矢は量的金融緩和、実際には円高を是正すること。
 二点目は財政にゆとりを持たせること。この二点はいずれも理解できます。
 三点目は女性の社会参加意欲を高めることですが、これも正しいと思います。例えば飛行場で荷物を運んだり、何がしかのサービス業に従事している外国人を見かけることが近年ますます多くなっています。この点からも彼の経済政策は全体的に見て正しかったと言えます。日本には大きな経済成長の余地は残っていませんが、多くの海外資産を持つ裕福な国家であることに変わりないので、経済の成長だけを追い求めるべきではありません。この点から見ても私は安倍内閣の政策は評価に値するものだと考えています。
 
― 岸田内閣の「新しい資本主義」は、アベノミクスの延長なのか、それとも方向転換したものなのでしょうか?
 新しい資本主義であれ、より包摂的な資本主義であれ、私たちはそれらを収入減少に対する重視と理解しています。既に一部ヨーロッパでは実現されていますが、まだ実現されていないアメリカや他の先進諸国でも近年、最低所得保障制度の導入が議論され始めました。最低賃金ではなく最低所得の保証です。
 この点に関してですが実は日本は既に実現できていると言えます。何故なら日本は西側諸国の中で最も公平性を重要視している国家だからです。日本では他国の人間からすればそれがあまり重要視されないような職種であっても人々が同じように尊厳を持って働いています。ですから、新しい資本主義がこれ以上どうやってワンランク上の平等を目指そうとしているのか理解に苦しみます。
 以上の視点からも新しい資本主義は過去の否定ではない、と考えます。
 また日本で自然災害が起こる度に彼らの秩序ある行動に驚かされます。例えどのような場所であろうと救援を受ける際、誰もが秩序を保っており、これは日本人の団結力の表れとも言えます。
 彼らは長年にわたって公平性を重要視してきたので、私には日本がどうやって更に一歩進んだ新しい資本主義を実現しようとしているのか想像がつきません。
 私は話の初めの方で、もし日本の友人が中国に来る機会があったら、彼らにとっての一番の発見は、中国にはアメリカのようなアニマルスピリットが溢れている点であろうと言いました。当然ですが公平をあまりにも重視しすぎると、社会のアニマルスピリットの発現に影響を及ぼすことになります。
 
― 中国で共同富裕という目標が掲げられるようになってから、日本のメディアは共同富裕の考え方は日本の60年前の経済政策、国民所得倍増計画に似ていると言っています。
 私はその対比は適切ではないと思います。日本は60年代、70年代に高度経済成長を果たしました。そしてオイルショックが起き、石油を輸入に頼っていた日本国内ではインフレが2倍に達しましたが、このような状況下でも日本の経済成長は更に80年代終わりまで続きました。ですから私は今の中国と2倍近い経済成長を簡単に達成した60年代の日本は全く違うと思います。現在の中国はこれまでの比較的速い経済成長速度から、ゆっくりとした持続可能な成長速度に移行しつつあり、国民の経済成長に対する期待にも変化が見られるようになりました。
 共同富裕が掲げられた背景には、中国が今後発展を遂げていく上で、弱者層の福祉にどうやって目を向けるかという課題がありました。
 例えば私たち一人ひとりがオリンピックにアスリートとして参加することはありえません。それぞれ生まれ持ったものが違うからです。私たちは誰に対しても同じ機会を保証すべきですが、しかし同じ結果を保証することはできません。誰に対しても同じ結果を保証するなら経済は活力を失ってしまうでしょう。
 私の理解する共同富裕とは平等な機会の保証のことであり、平等な結果ではありません。
 
― 世界的コロナ禍の中、昨年日本のサプライチェーンも大打撃を受け、多くの工場が操業不能に陥りました。中国でも厳格なコロナ対策が行われていて一部の自動車工場が生産停止状態になっています。今後、同じような状況に直面したらどうすればいいか?サプライチェーンの寸断を回避する方法はないか?という企業家からの質問はありませんか?
 自動車産業だけでなくそれより工程の少ない他の産業であっても、今日これだけ多くの部品を自社だけで生産するのは不可能なので、根本的な解決策を私は持ち合わせていません。ここ数か月、サプライチェーンの再構築について議論する人が増えていますが、実際に行動に起こせる人は少数でしょう。何故なら投資プランに基づいて一旦生産が始まってしまうと、サプライチェーンを再構築するのは難しいからです。サプライチェーンの再構築はコストの大幅な増大を意味しますが、だからと言って全く手をつけないというわけにもいきません。今後一定の調整が必要なのは確かですが、極端な再構築は非現実的と言えます。
 
― 現在、手がけていらっしゃるプロジェクトをご紹介いただけないでしょうか?
 それでは日本の投資家だけでなく、ヨーロッパ、アメリカも含めた多くの投資家が中国のどのような問題に関心を寄せているかシェアさせてください。
 具体的な名前を出すことはできないのですが日本の投資家や企業が注目しているのは中国の電気自動車産業の発展についてです。何故なら中国は最終的には必ず世界最大の電気自動車市場となり、電気自動車のスタンダードは中国とは切り離すことができないものになるからです。そして今後の電気自動車産業の発展が今ある産業に与える影響について、日本のトップ企業がどう考えているか皆さんにも容易に想像できるかと思います。
 またこれとは別に多くの企業が関心を寄せているのは、中国の消費者、特に若い消費者の需要です。なぜなら高齢者は若者とは違い、その収入の多寡に関係なく消費習慣を変えることは殆どないからです。若者の自動車に対する購買傾向や更に高級な消費習慣、それ以外にも先進諸国では珍しいものではないフィットネス、美容、ペット産業などの需要にも多くの投資家が関心を寄せています。
また投資家の多くが生産拠点の一部をベトナムやタイ等周辺諸国に移すべきではないかとサプライチェーンについても考え始めています。ここ数年、私達もこれらの国々にはそれぞれ問題があることを学んできました。企業がコスト軽減ばかりに気をとられて、人的コストが安いというだけで投資先を選んでいては、その国の官僚主義の問題や、インフラの不備などの諸問題に後になって気づくことになるでしょう。
 
― 毎年、上海で中国国際輸入博覧会が開かれています
 私も興味深く見守っています。中国の開放がいくら進んだからと言って、我々消費者の欲求はまだ満たされていません。もし選択が可能であるのならば、実際には多くの消費者が輸入商品の方を選ぶはずです。私はこのことからもこの博覧会に注目しています。一人の中国人として中国はもっと開放を進める必要があると感じています。
許思涛氏 略歴
デロイト中国チーフエコノミスト
 
北京大学経済学部卒。コネチカット大学経済学修士。 専門はマクロ経済学。ザ・エコノミスト・グループ(The Economist Group)中国首席代表、ザ・エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(The Economist Intelligence Unit:Global Insight)の中国担当責任者、香港スタンダードチャータード銀行北東アジア地域経済アナリスト、フランスのソシエテジェネラルのアジア担当チーフエコノミスト、中国工商銀行アジア経済スーパーバイザーを歴任。 ウォール・ストリート・ジャーナル、フィナンシャル・タイムズなどの特別コピーライターも務める。清華大学経済管理学院客員教授。

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