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SPF NOW

中国経済セミナー登壇者インタビュー Vol.2
賈康氏(華夏新供給経済学研究院院長)
<前編>

笹川日中友好基金


2022.07.21
笹川日中友好基金は、中国の米中新視角基金会(周志興主席)の協力を得て中国経済セミナーシリーズ(全3回、2021年12月~2022年2月)を開催しました。本セミナーの第2回目に講師としてご登壇頂いた華夏新供給経済学研究院院長、財政科学研究所前所長の賈康氏に日本の経済政策、中国の不動産事情や債権問題等についてお話を伺いました。(2022年4月19日収録)
聞き手:宋看看(上海東方テレビ東京支局長)
――この40年の中国の都市住宅制度改革によって、中国人の住宅がどのように変化したか総括していただけませんか?
 改革開放当初は各種の問題が交錯し山積みになっていました。中国では長期間にわたり、一人当たりの住宅床面積が非常に低い水準にありました。人口増加もあり改革開放が始まったばかりの78年、79年ごろ、中国の都市や町では一人当たりの住宅床面積は3㎡あまりという狭さでした。最も典型的な上海では三世代、四世代が身を寄せ合って一緒に暮らしているような窮屈な状況も見受けられました。一人当たり3㎡あまり、当時の中国人の生活水準がどれだけ低かったか想像してみてください。当時日本では既に家庭用の冷蔵庫が普及していましたが、中国では全く想像できないことでした。
 一人当たり3㎡あまりだった住宅床面積が、40年の改革開放を経て、今では10倍以上になりました。最新の統計資料によると都市部では40㎡に近づいているそうです。
 70年代、私は軍隊にいました。北京に戻ってからは北京鉱務局の電機修理工場に入りました。この電機修理工場の集合宿舎には何軒かの家族が暮らしていましたが、家を分配されたわけではなく、仕方なく集合宿舎で我慢するしかなかったのです。改革開放を知らない若い世代には想像もつかないことでしょう。
 北京にはかつて筒子楼と呼ばれる住宅がありました。筒子楼というのは、一軒一軒が独立した玄関を持つ住宅ではありません。この五、六階建ての建物に入ると、中央に廊下があってその左右が事務室のように一部屋一部屋小さく区切られているのですが、その一部屋に一家族が身を寄せ合って生活しているのです。その各フロアの端に一カ所だけ共同トイレと、顔を洗うための蛇口がいくつか並んだ共同の洗面所がありました。では食事はどうやって作るかというと、この筒子楼の廊下に所狭し並べられた炭団や練炭などを使う調理器具で調理していたのです。これは今の一般市民が求めている快適な住居環境とは全くかけ離れたものでした。
 当時はこれがやむを得ない状況でした。最近では現代社会の一般標準に近づきつつあります。我々はよく何LDKという表現をするようになりましたが、70年代末から80年代初頭にかけて初めてリビングルームという概念が現れました。幼いころ私が住んでいた家にはリビングルームがなく狭い廊下といくつかの部屋があるだけでした。その後リビングルームが生まれ、浴室やトイレも精巧になり、それ相応の家電も揃ってきました。一人当たり40㎡程度の住宅床面積という都市住民の居住環境は、世界基準、現代社会の標準に近づいてきたと言えます。
 都市では一人当たりの住宅床面積が40数年で十倍になりましたが、一方でホワイトカラーの若者や、農村から都市に働きにくる農民工が抱える悩みなど一般市民の住宅環境の発展には、見過ごすことのできない問題が存在しています。この農民工という呼び方自体おかしなものです。彼らは農村を離れて、都市で十年二十年、場合によっては三十数年も働きながら暮らしているのに未だに農民工と呼ばれています。都市戸籍を取得できず未だに戸籍が農村にある場合、彼らは農民工とその家族と呼ばれています。彼らの都市における住環境は一般市民より更に大変なものです。例えば購入資金があったとしても住宅購入資格がありません。また基本公共サービスにおいても都市市民とは平等に扱われておらず,待遇面で格差が存在しています。これは都市市民が差別しようと思って彼らを差別しているわけではなく、都市部ではまだ住宅の供給が追い付いていないため、こうした対応せざるを得ないのです。特に北京、上海、広州、深圳などの大都市では、農民工とその家族にとっては住宅の購入資格も障壁の一つですが、彼らの年金、彼らの子供が受ける教育、彼らの医療保障などの待遇にも格差が存在します。    
 また若いホワイトカラーの場合、都市戸籍を持っていて住宅の購入資格があったとしても、自己資金だけでは毎年上昇し続ける住宅価格に対応しきれず、ハードルだけが高くなっていく、といった状況にあります。ですから中国の若者は両親祖父母6人の財布で住宅を購入し家庭を持つ、という言い方もあります。
 
――日本の若者は、結婚する前に必ず家を買わなくてはならない、とは考えません。中国人にはまず家を買うことが結婚の必須条件だという考えがあります。日本では中国人は皆お金持ちだと思われています。
 そうですね。中国人が家を買う時は、気前がいい、度胸がありますね。かつて世界的に見ても日本の不動産は高かったですが、現在では中国の不動産も日本に全く引けをとらなく高くなっています。実際の購買力を考えると、持っている家を売って資金を作り、家を買い替えるには相当な決心と自信がいる筈です。この中国人の自分の家を購入するという理念は伝統的な考え方と密接な関係があります。日本の若者は一般的にこう考えます。仕事を始めて日も浅いので、持ち家を売ってまで新しい家を買う必要はない、家は借りればいいと。しかし現在の中国人の若者には、結婚するためには必ず自分が財産権を有する家を持たなくてはならない、という共通意識があります。こうした意識が、収入の増加にともない日本で住宅を購入することも選択肢の一つとなった今、中国国内で住んでいる住宅を売って得た資金で日本に家を買う、という考え方のもとになっています。また一方では親の脛をかじる、或いは年長者に支援してもらう、という考え方もあります。夫婦双方の親の支援、更に一世代上の祖父母の支援を合わせて得ることもあります。中国では親の支援なくして成功はありえない、と言う考え方が普遍的になっています。そしてこのような考え方があるからこそ、財産権のある不動産の購入が重要視されるようにもなりました。
 ではこの背景にあるものは何でしょうか?現在の中国は、かつて日本経済が飛躍的発展を遂げた時期に不動産価格、特に住宅価格が高騰したのと同じような状況にあります。住宅の供給価格は上昇を重ねていますが、その原動力を経済学の視点から分析すると、中国の工業化が必然の結果として都市化を招き、都市化が進むことによって、より多くの人が農村から都市に流入し、都市常住人口となり、彼らの住居を解決する必要が出てきたことがその原因です。彼らのために、都市はより多くの住居を供給する必要に迫られましたが、同時に一人当たりの住宅床面積を大幅に増やす必要もありました。つまり、新たに提供できる土地が都市部に押し寄せてくる新しい常住人口に追い付かず、都市の住宅供給は必然的に売り手市場となり,社会の需要に供給が追い付かない慢性的な供給不足の状況に陥りました。  
 人々を引き付けるのはやはり商工業が盛んな場所とこれからの発展が約束されている場所ですが、これら人々を引き付ける中心地区、その中心地区の中でも更によいエリア、北京で言うなら当初は三環路内、その後は四環路内、今では五環路内でさえよいエリアだと言われ人気が高いです。しかしその外側の、中心地区から遠く離れたエリア、河北省との境にある通州や燕郊などは全く様子が違います。これがエリアの違いです。
 人気のあるエリアとないエリアの二極化は今後も長期間にわたって続くと私は予想しています。二極化は長く続きますが、中国の都市化が完成に至るまでの今後十数年の高度成長期、全体的に見れば1㎡あたりの平均価格は、やはり右肩上がりが続くでしょう。
 平均価格にも波があり、価格が上昇する度に一般市民は焦りとともに不満を感じます。不動産価格の上昇は政府にとってもプレッシャーですが、逆に不動産価格が下落すると、この地区は不景気だ、市場が低迷している、前途多難だ、人口減少が始まっている、などと思われるので、下がるのもよくありません。
 中央政府は健全な不動産業の発展を促す長期策を打ち出そうとしています。基本的な住宅需要を満たすための充分な供給を行い,市場の変動を小さく抑え、一般市民が居住環境の改善に期待感を抱き続けられるような、より肯定的評価を得られる状態が健全な発展で、それを継続するための長期策です。
 今の時代の課題である平和と発展を今後も維持できるのであれば、中国は少なくとも今後十数年は、工業化に伴う都市化の成熟期に向けて高度成長が続くでしょう。実質都市化率は現在の50%前後から60%台、70%に迫り、今後十数年から二十年程度の間は北京、上海、広州、深圳といった一級都市の1㎡あたりの平均価格は上昇傾向がとまりません。これらの地区での不動産価格の上昇に打つ手がないでしょう。
 
――日本では結婚後にローンを組んで住宅を購入します。日本の銀行のローンは約0.6%ですが、中国は5%です。日本の30歳前後の若者は自分の収入でローンを組むことができますが、中国の若者には難しい状況です。中国の若者はいつになれば親の支援に頼らずに住宅を購入できるようになるとお考えでしょうか?

 政府は現在、財産権共有住宅を広めようとしています。これは比較的低価格で購入することができ、所有権利書もありますが、市場価格の上昇に合わせて売りに出すことはできません。これはこの住宅の転売で利益を得ようとすることを防止するためのですが、中低所得者向け低価格住宅を購入できない人々、若いホワイトカラー、新都市住民などの住居と所有権の問題を同時に解決し、結婚するには所有権のある自分の家を持たなくてはならない、という中国人の意識のハードルをクリアすることが可能になります。同時に、ローンも軽い負担ですむため、重要な住宅保障制度の一環として政府は公共賃貸住宅よりも、所有権利書のあるこの財産権共有住宅の供給に力をいれているところです。
 
――日本にも中国の二極化に似た状況があります。日本の過疎地域では古い家屋が空き家になっています。政府は対策として、都市の若者に空き家を廉価で提供し、彼らがその地域で生活や仕事をすることで地域経済の発展を促そうとしています。中国でも不動産熱が冷めた地区の不動産を何か特別な政策で救うことはできないものでしょうか?

 現在、特に有効な政策はありません。不動産熱が冷めた地方の政府は、社会の期待感の誘導、例えば値下げ禁止令の発令などの態度を示していると聞いています。これは管轄している地域で不動産価格が下落している場合、過度に低い価格で売り出してはならないという制限を設けるものです。もちろん市場経済の理論に反していますが、少なくとも一部の地方政府はそうした態度を見せています。
 値下げを食い止める側の立場からは、住宅購入のハードルを下げようとする努力がみられます。例えばローンを組むための制限が次々と撤廃されています。また住宅購入資格の緩和、更には購入資格を設けない例もあります。数年前に実際にあった例ですが、政府が補助金を出し市民の不動産購買意欲を刺激し、その地方の不動産価格を押し上げるようなことが、今後も一部の地方政府では緊急対策として行われるかもしれません。特に不動産熱が冷めた地方では、政府が様々な策を講じ、市場価格を押し上げようとする姿を目にすることになるでしょう。
 
――現在日本の不動産もバブル前の水準にまで値上がりしています。特に高級マンションは20%から30%値上がりしています。これは日本の新しい不動産バブルの始まりだ、と言う人もいます。

 少し大げさではないでしょうか。北京では最も下がりにくい不動産は高級別荘だ、と言われています。日本の状況も似ています。まず高級住宅から値上がりが始まり、それが住宅供給市場全体に波及していきます。値上がりを始めたばかりで、すぐにバブルというのは少し大げさだと思います。私は一部の日本人はまだかつてのバブルの恐怖に怯えているのではないかと思っています。バブル後の失われた20年の停滞期は住宅、土地、オフィスなど不動産価格の下落幅が特に大きかったです。その不快感や辛さが、今なお多くの人にとって記憶に新しいものであるため、バブルの再来とバブルが去った後の再破綻を特に心配しているのではないでしょうか。私は日本政府やその他の各組織が前回の不動産バブルを積極的に総括しているので、不動産熱が回復したとしても前回よりも適切な対応がとられると思っています。政府の政策に関してもディベロッパーがどう市場を予測しているのか、各組織や個人はどのような状況下で売買するのか、などをより緻密に分析しているので、理性的制御力は当時より格段に上がっているはずです。ですから、私はバブルという言い方は警戒の意味であって、今の日本では一般的に言われるバブルは起きないと考えます。(後編に続く)
賈康氏 略歴
華夏新供給経済学研究院創始者・院長、中国財政科学研究院研究員、財政部財政科学研究所前所長

専門は財政経済学。北京経済学院(現首都経済貿易大学)卒。財政部科学研究所経済学博士。1985年より中国財政部財政科学研究所に勤務し、研究員補佐、研究員、副所長を経て、同所長を長年務め、政府の経済政策の立案に参加。中国財政学会PPP専門委員会主任委員、北京大学、中国人民大学、国会財政学院などの特任教授。ピッツバーグ大学訪問学者、プリンストン大学訪問学者などを歴任。中国経済学会最高賞である「孫冶方経済科学賞」の受賞者。

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