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第311号( 2013.07.20 発行)
第311号(2013.07.20 発行)

新たな海洋基本計画の策定について

[KEYWORDS]海洋基本計画/海洋エネルギー・鉱物資源/海洋安全保障
海洋政策担当大臣◆山本一太

最初の海洋基本計画の策定から5年が経った。この間、東日本大震災を契機としたエネルギー戦略の見直しの動き、メタンハイドレートやレアアース泥を始めとする海洋資源の開発・利用への期待の高まり、海洋安全保障や海洋権益をめぐる国際情勢の変化等、わが国の海洋を取り巻く社会情勢は大きく変化している。
新たな海洋基本計画は、海洋立国日本を実現していくための今後の指針であり、関係者が一体となった取り組みが重要である。

はじめに

2007(平成19)年の海洋基本法の成立により、内閣総理大臣を本部長とする総合海洋政策本部が設置されるとともに、海洋基本計画を定め、海洋に関する施策を総合的かつ計画的に推進していく体制が整えられた。
海洋基本計画は概ね5年ごとに見直すこととされており、わが国の海洋政策の実施状況や、社会情勢等の変化、今後の見通し等について官民で議論を重ねた結果として、本年4月26日、新たな海洋基本計画が閣議決定された。

海洋立国日本の目指すべき姿

この5年間での海洋をめぐる社会情勢等の変化としては、まずは東日本大震災を契機としたエネルギー戦略の見直しが挙げられ、将来のエネルギーについての国民的な議論が進む中で、洋上風力等の海洋再生可能エネルギーへの期待が高まっている。また、レアアース供給の不安定化、高価格の天然ガスの輸入増大により、安定的な資源確保の重要性が高まる一方で、わが国周辺海域においては、メタンハイドレート等の調査研究が進むとともに、南鳥島周辺でレアアースを含む堆積物が発見されるなど、海洋エネルギー・鉱物資源の開発・利用への期待が高まっている。
一方、近隣諸外国の海洋安全保障や海洋権益をめぐる主張や活動の活発化に加え、ソマリア沖等における海賊被害も続いており、海洋権益の保全や海洋の安全確保の重要性が高まってきている。さらには、気候変動による北極海の海氷面積の減少を受け、北極海航路の可能性等についても世界的な関心が高まってきている。
新たな海洋基本計画では、このような状況を踏まえ、海洋立国日本の目指すべき姿として、(1)国際協調と国際社会への貢献、(2)海洋の開発・利用による富と繁栄、(3)「海に守られた国」から「海を守る国」へ、(4)未踏のフロンティアへの挑戦、の4つを今後の取り組み姿勢や目指すべき方向性の基本として掲げた。

新たな海洋基本計画における取り組みの主な内容

(1)海洋の開発および利用と海洋環境の保全との調和
わが国周辺海域で石油・天然ガス、海底熱水鉱床、メタンハイドレート等様々な海洋エネルギー・鉱物資源の賦存が明らかになりつつある。今後は、例えばメタンハイドレートについては、平成30年度を目途に、商業化実現に向けた技術の整備を行い、レアアースについては、今後3年間程度で資源量調査等を実施する。
海洋再生可能エネルギーに関しては、洋上風力については、着床式は銚子沖や北九州沖で、浮体式も長崎県五島沖や福島沖でそれぞれ実証事業が進むなど、今後の利用促進が期待されているほか、波力・潮流・海洋温度差等についても検討が進んでいる。今後の実用化・事業化を加速させるため、港湾区域等における先導的な取り組みや、海域利用に関して法整備を含めた調整の枠組みを検討するなどの環境整備を進める。
(2)海洋の安全の確保
わが国周辺海域およびシーレーンや離島の安全を確保するため、関係諸国との協力や、自衛隊、海上保安庁等関係省庁間の連携を強化する。また、海上の治安維持や警備に万全を期すため、海上保安体制の強化や海難防止対策を推進する。さらに、これまでの海賊対策を継続するとともに、日本籍船での民間武装警備についての特別措置についても推進する。
(3)科学的知見の充実
海洋科学技術に関しては、地球温暖化と気候変動、海洋資源開発、海洋生態系の保全・生物資源の持続的利用、自然災害対応等の政策ニーズに対応した調査および研究開発を推進する。また、北極海航路の利用可能性、海洋における衛星情報の一層の活用について検討する。
(4)海洋産業の健全な発展
造船、港湾整備、海上交通路の整備および船員の確保・育成に総合的に取り組む。外航海運については、トン数標準税制の適用などグローバルな環境変化を踏まえた戦略的対応を進めるとともに、造船業については、受注力の強化、新市場・新事業への展開等により競争力の強化を図る。
また、石油や天然ガス等の海洋開発や、洋上風車に係る世界市場は今後一層拡大すると予測されており、こうした世界の海洋開発需要を取り込み、わが国の海洋産業の育成・成長を図ることは、わが国の成長戦略の鍵として期待されている。このため、洋上ロジスティックハブに代表される新たな海洋産業の創出に向けた取り組みを推進するとともに、海洋再生可能エネルギー開発の産業化に取り組む。
(5)海洋の総合的管理
国、地方公共団体等が連携して陸域と一体となった沿岸域の総合的管理を促進するとともに、EEZ等の利用を促進するため、海域管理に係る包括的な法体系の整備を進める。わが国の領海、EEZの外縁を根拠付ける国境離島の安定的な保全、管理等を推進する。
(6)海洋に関する国際的協調
国際的なルールやコンセンサスづくりに貢献するとともに、海洋に関する紛争等の解決について、国際司法機関等の第三者機関の活用を重視すべきという考え方を各国で共有するよう促すなど、法の支配に基づく海洋の国際秩序形成・発展に貢献する。

海洋立国日本の実現に向けて

■第10回総合海洋政策本部会合において新たな海洋基本計画を議論する様子(H25年4月26日、官邸)

本年4月26日、閣議前に開催された総合海洋政策本部会合において、安倍総理・総合海洋政策本部長からは、「世界初のメタンハイドレートの産出試験が成功するなど、海洋資源開発への期待が大きく高まる一方、安全保障環境は一層厳しさを増しており、わが国の領海等を断固として守り抜かねばならない。新たな海洋基本計画は海洋立国日本を実現していくための今後の指針となる。総合海洋政策本部が司令塔機能を発揮しつつ、政府一丸となって海洋政策に取り組むことが重要であり、各閣僚は、一層の努力をお願いする」旨の発言があった。冒頭に記したように、わが国の海洋を取り巻く環境は日々変化し続けている。このような状況に適切に対応し、世界に誇れる海洋立国日本の実現を目指していきたい。(了)

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