Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第428号(2018.06.05発行)

編集後記

東京大学海洋アライアンス海洋教育促進研究センター特任教授◆窪川かおる

◆さる5月15日に第3期海洋基本計画が閣議決定された。2007(平成19)年4月の海洋基本法制定から10年が経ち、世界の海洋分野全体の情勢が変化したのに対応して今後を見据え、新たな海洋政策の理念と方向性に基づいた「総合的な海洋の安全保障」および主要な具体的施策9項目の推進がここに始まった。5つのキャッチフレーズもあり、基本計画が馴染み易くなっている。同日に「我が国における海洋状況把握(MDA)の能力強化に向けた今後の取組方針」も策定されている。緊張感をもって海洋分野の取り組みが加速されるだろう。
◆東京大学海洋アライアンスの日本財団助成プロジェクトから「海洋利用に関する合意形成プロセスに係るガイドライン」が公表されている。想定される読者対象は、海洋の事業計画に関連する地方自治体であるが、ステークホルダーにも参考となる。東京大学大気海洋研究所の道田豊氏と同大公共政策大学院の諏訪達郎氏より解説をいただいた。海域の特徴の筆頭には、所有者が法令で定められていないことがあげられる。多様で複雑な利害関係の事例研究が数多く解析され、合意形成のプロセスにガイドラインが示されたことは大きな意義がある。
◆横浜港の大桟橋一帯は、赤レンガ倉庫や異国情緒あふれる洋館が並ぶ。その一角に日本郵船歴史博物館がある。NIPPON YUSEN KAISHAと中央に付された威風堂々とした建物がそれである。常設展示、企画展示および多数のイベントを通してわが国の海運とその歴史を来館者に伝えている。博物館学芸員の鈴木久美子氏より日本郵船氷川丸と合わせてご紹介をいただいた。氷川丸ではアールデコ様式の食堂や船室や歴史展示などを見学できる。海運史を象徴する両施設は、2017年に第10回海洋立国推進功労者表彰を受賞した。日本郵船(株)の創業は1885(明治18)年である。日本の海運業の変遷は近代における海洋国日本の歴史であることが一目瞭然となる貴重な両施設である。
◆海老は長寿の縁起物とされる。海老を原料に含む「えびせんべい」の生産量は、愛知県が約95%を占める。この地の海老漁業の盛衰、海老菓子の伝統と新たな展開を桂新堂(株)代表取締役社長の光田敏夫氏から教えていただいた。四季と豊かな海の幸に感謝する著者の心に同感である。そして豊かな海の幸をお菓子にまで使う日本の食文化の豊かさに改めて気付かされた。 (窪川かおる)

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