交流事業の意義

胡一平
胡一平らは毎回、日中の各代表団にアンケート調査を行っている。
「毎回そうですが、皆さんはまず、この事業をひじょうに評価してくれています。ただ、自衛隊と人民解放軍ともに、陸・海・空部隊の見ることができるレベルというか、中身については、少し改善してほしいと考えており、不満がある。今後、見るもののレベルを一歩一歩上げていきたいと思っています。それには、日本か中国のどちらかが先に一歩進まないといけない。そこがひとつの課題です。部隊の視察以外にも、できるだけいろいろな内容をアレンジしていきたいと思っている」
一方、于展はこう考えている。
「もう一歩レベルアップし、信頼醸成における具体的な協力を生みたい。例えば、災害救助での協力です。そうした友好協力のところまでもっていきたい」
日中交流事業の意義を、胡一平はどう考えているのだろう。
「使命はひとつには、相互理解を促進するために、いろいろな人を巻き込んだ事業でなければいけないということ。どういう人たちを巻き込めば一番効果があるか、ということを考えないといけない。佐官級交流は笹川平和財団ではないとできない。一生懸命やる価値があると思います。日中交流事業は他にもありますが、今の日本を中国に伝え、また今の中国を日本人にも伝えないといけない。その架け橋になるような『仲介業者』みたいな仕事です」
本当の意味での友好を深めることの難しさも語る。
「日本と中国は特別な関係だと思う。隣国でもあるし、歴史問題もあり、政治体制も違う。だから私は『友好』という言葉はあまり好きじゃない。今までは『友好』でよかったかもしれないけど、平和友好条約締結から40年、国交正常化から45年が経って、時代も中国も日本も人々も変わっている。だからずっと『友好、友好』と言っているのは、少し時代遅れだと思う。お互いに知り合い理解し合い、相手を客観的にみる。自分のイデオロギーや価値観で相手を見て、それを相手に求めるということでは、もう無理ですから。自分の価値観を強制的に相手に押し付けることはできないです。正常に、普通に付き合える関係を築くことができればベストです。お互いの利益になることを探して、共存していかないといけない。相手をありのまま見て、見てもらうということが基本だと思っている。私がやっているのは、そのための仕事です」
=敬称略