民間だからできることがある

 タイ深南部の紛争は、国際社会からは「取り残された紛争」と揶揄されることさえある。国際社会と海外メディアの関心も極めて低い。その要因はさまざまだが、タイ政府が内政問題だとして、「内政干渉」を盾に関与を頑なに拒絶していることが大きい。また、紛争はタイ全土に広がるでもなく深南部に限定されており、東南アジア地域や国際社会への影響は乏しい。イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)などの国際テロ組織が、流入している形跡も見当たらない。
 堀場は、日本政府が将来的に深南部問題にかかわることへの期待を込めつつ、民間の役割をこう強調する。
 「和平対話を促進する活動に、日本政府が最終的に入るべきだと思っている。その前に民間ができることがもっとあり、先に笹川平和財団という民間が下地を作り、ある程度できた段階で日本政府に入ってもらえばいい。政府はもっと民間と組まなければならない。まず民間がやり、政府が入ってくるというモデルを、深南部事業によってつくりたいと思っています」
 笹川平和財団が深南部事業を始めてから、2020年で10年となる。
 「とりあえずあと2年で、限定的な停戦などを成功させることが、目下の目標です。和平対話にはさまざまな段階があり、完全な自治というものを付与しない限り和平はあり得ませんが、とりあえず武器を置き、パタニの人々も自治について勉強する必要がある。その方向へシフトさせていこうというのが、私の今後の戦略です」
 フィリピンのミンダナオ島での紛争は、終結するまでに40年以上、コロンビア内戦は50年以上を要した。「地道にやるしかない」。堀場の自らに言い聞かせるような言葉からは、強い意志と決意がうかがわれる。
 中山は今後の課題について、次のように語る。
 「タイ側の政治家や上層階級にどれだけ譲歩してもらえるか、そのためのロビー活動が次のフェーズです。また、パタニの人々も暴力ではなく、政治的な要求によって問題を解決していく運動へと洗練されていかなければならない。そこも課題です」
=敬称略
(特任調査役 青木伸行)

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