Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第592号(2025.04.20発行)

編集後記 

(公財)笹川平和財団海洋政策研究所所長◆牧野光琢

2024年1月より海洋政策研究所所長に就任いたしました牧野光琢です。海に関する科学−政策−社会インターフェイス(SPSI)の世界拠点を目指し、所員一丸で取り組んでまいります。今後とも、皆様のご指導とご鞭撻を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

◆Ocean Newsletter第592号では、「海業」特集をお届けします。海業には、水産業だけでなく、海洋レジャーや食文化、漁港インフラや漁労文化など、さまざまな生業が含まれます。地域の多様な資源を活用し、産業間の連携を強化しながら、持続可能な方法で資源と環境を活用し、地域経済の発展に貢献する─「海業」の考え方は、海に囲まれたわが国においてとても重要です。過去のOcean Newsletterでも、「海業のすすめ」(第538号)をはじめ、漁港制度の見直し(第551号)や洋上風力との共存(第550号)、さらにはレジャー利用の展開(第578号)など、さまざまな視点から海業の可能性が論じられてきました。◆今回の特集では、海業の“いま”を地域から伝える3つの実践的な例が紹介されています。まず、静岡県沼津市戸田地区における取り組みについて、佐藤寿美氏にご寄稿いただきました。戸田地区では、漁業者、観光業者、そして地域社会全体が連携し、深海ブランドの確立を進めておられます。2本目の記事では、同じく静岡県西伊豆地域から、釣り人(観光客)と漁業者・地元住民、そして漁業資源の共存共栄を目指し、漁港を有料釣り場として利用できる予約アプリ「海釣りGO」を企画・開発された西伊豆町役場の松浦城太郎氏に、その背景と成果をご紹介いただいています。そして、3本目の記事では、古くから捕鯨文化を持つ和歌山県太地町における“くじら”を核としたまちづくりの歩みを、和田正希氏にご紹介いただきました。◆これらの記事に共通するのは、地域の資源や文化を現代の視点から見つめ直し、自治体や地域の人々が主体となって、海との関わり方を再構築している点にあります。海業の振興は、単なる経済活動の拡充にとどまらず、地域の誇りや学びの機会、持続可能な未来への架け橋ともなり得ます。今後、国の支援や制度が拡充し、科学的な知見も活用しながら、さらに多くの地域で多様な海業が展開していくことが期待されます。本特集が、地域の海と共にある人々の暮らしの、新たな、そしてより豊かな可能性を広げる一助となれば幸いです。(所長 牧野光琢)

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