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オーシャンニューズレター

第54号(2002.11.05発行)

第54号(2002.11.05 発行)

カナダの海洋戦略、本年7月発表さる

インフォメーション◆Ship & Ocean Newsletter 編集部(監修:中原裕幸 (社)海洋産業研究会常務理事)

「カナダの海洋戦略」は、カナダ国内の「河口、沿岸域、そして海洋生態系の管理のために政府の政策綱領」として2002年7月12日に発表された。1997年、カナダは世界で初の包括的な海洋基本法を制定した国となったが、その後、政府による集中的検討を経て、この海洋管理のための包括的な基本戦略が取りまとめられたものである。

世界初の包括的な海洋基本法制定

カナダ政府は1970年代初頭から沿岸地域の重要性を認識し、1972年には沿岸地域管理法を制定した。また、1982年の国連環境会議の議決を受けて、沿岸管理政策の見直しに着手し、統合的沿岸地域管理(IntegratedCoastal Area Management: ICAM)政策への転換を図った。さらに、国家科学技術諮問会議は、1994年に報告書を首相に提出し、包括的な海洋に関する基本法制定を進言した。政府はこれを受けて、1995年6月に、自国の海洋支配権のおよぶ範囲、海洋管理の戦略策定および連邦政府の海洋に対する責務を骨子とした法案を議会へ提出、1996年12月18日これを可決し、翌1997年1月31日、海洋基本法(Canada's OceansAct:COA)が施行されたのである。

同基本法では、第一部で12海里領海および200海里排他的経済水域の設定を明示し、その海域での生物ならびに非生物資源の採取、採掘および保全に関する国家としての権利と義務を規定した。また、海洋環境の保全、海洋科学研究の推進、海洋構造物の規制に関する規定も示されている。第二部では、海洋保護区の設定、沿岸域の統合管理の実施、海洋生態系の保全に関する権限について規定した上、第三部で、海洋・沿岸域問題に関する権限を海洋漁業大臣(Minister of Fisheries andOceans)に一元化することを規定している。

「カナダの海洋戦略」を策定

「カナダの海洋戦略」(Canada's Oceans Strategy)は、カナダ国内の「河口、沿岸域、そして海洋生態系の管理のために政府の政策綱領」(Executive Summaryより)として2002年7月12日に発表されたもので、全文約30ページのものである。

Robert G. Thibault海洋漁業大臣による巻頭メッセージによれば、カナダは3つの海洋に面する海洋国家であり、世界で初の包括的な海洋基本法を制定した国となったが、その後、カナダ政府による集中的検討を経て、この海洋管理のための包括的な基本戦略(overall strategic approach to ocean management)が取りまとめられたものである。

以下に、Executive Summaryの重要部分を抜粋、要約して紹介する。

───この海洋戦略は、カナダの将来の海洋管理に向けたビジョンと原則および政策目標を規定するものであり、特に、「海洋環境の理解促進と保全」「持続的経済機会(sustainable economic opportunities)の支持」「国際的リーダーシップ」についての政策および施策(policy and programs)を支持するものである。また、この海洋戦略は、一般に、とりわけ海洋管理(Ocean Governance)については、連邦政府のみの責任を越えて全ての関係機関で分かち合うべき集合的責任のもとにあることを謳っている。その上で、この海洋戦略のもとで、次の特定の3点については、海洋管理についての前進が図られるものとしている。

まず第一は、連邦政府と各省庁間等の協調性を高めるメカニズム(institutional governance mechanisms)についてである。海洋管理の調整を促進するために、委員会や審議会、および情報の共有化等、既存のメカニズムのみならず新しいメカニズムも活用することを提案している。第二に、総合的管理計画(Integrated ManagementPlanning)の策定を、この戦略は追求しているのである。海洋関連業界と地域に利益をもたらすと同時に、生態系の保護についても考慮した意志決定構造の確立を図る。第三に、この海洋戦略は、海洋に対する責務と国民意識を高めること(promotingstewardship and public awareness)によって、海洋管理活動にできるだけ多くの国民が従事するようにする。海洋に対する責務とは、現在の、そして次世代の人々のために、海洋とそれらの資源を賢く利用し保全する責任を持つことを意味する。

こうしてカナダの海洋戦略は、それぞれの政策目標下での実行を要請しているのである。その実行のためには、海洋資源に対する新しい見識と新しいビジネスも必要である。そして、アボリジニーグループと地域、業界、研究者、NGO、一般国民同様、政府のすべての関係機関が現在係わっている責任と参加が必要である。

もちろん、この戦略は、繰り返し見直され、発展していくべきものである。

<関連サイト>
http://www.dfo-mpo.gc.ca/oceanscanada

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