Ocean Newsletter
第54号(2002.11.05発行)
- シップ・アンド・オーシャン財団 海洋政策研究所長◆寺島紘士
- インフォメーション◆市川吉郎(ジェトロ・ニューヨーク・センター船舶部)
- インフォメーション◆Ship & Ocean Newsletter 編集部(監修:中原裕幸 (社)海洋産業研究会常務理事)
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- ニューズレター編集委員会編集代表者 (横浜国立大学国際社会学研究科教授)◆来生 新
EU諸国およびフランスにおける海洋産業の概観
インフォメーション◆Ship & Ocean Newsletter 編集部(監修:中原裕幸 (社)海洋産業研究会常務理事)フランス国立海洋研究所(IFREMER)では、フランスにおける海洋産業の市場規模をまとめた約90ページに及ぶ報告書、"French marine-related economicdata:2001"をつい最近取りまとめた(仏語版と英語版、約90ページ)。これは2年に一度刊行されているもので、今次報告書は、第4次のものである。この報告書では、EUが2001年に発表した1997年実績の海洋産業の現状(EU加盟国+ノルウェー)調査、"EconomicImpact of Maritime Industries in Europe"の概要も、その冒頭で触れている。そこで、ここでは、ヨーロッパ諸国の海洋産業の現状を鳥瞰図的に把握するために、まずその要点を紹介したうえ、フランスの海洋産業の規模と構造を要約部分にもとづいて概観することとした。
EU加盟国およびノルウェーの海洋産業
EU調査での海洋産業の分類は10分類になっている。これらの分類区分も海洋産業の捉え方を反映して大変興味深いが、文章と図で、分類用語が必ずしも統一されていない部分がある。(ただし、図1の円グラフでは占有率の少ない3つは「その他」として表示されている。)
- 海運(maritime shipping:客貨とも)
- 造船(shipbuilding:修繕、他目的への転換、軍用艦艇建造、解体を含む)
- 海洋作業(offshoresupply:地震探査、石油生産プラットフォームの建設、他目的への転換、資材・人員輸送業務、エンジニアリング、コンサルタント業務)
- 内水面海運
- 海洋工事(maritimeworks:海底ケーブル・パイプライン、浚渫、その他施工工事)
- 港湾および関連業務(maritimeharbours and related services)
- 漁業・養殖業(fisheries、aquaculture)
- レクリエーション(recreation:プレジャーボート建造、修繕、マリーナほかボーティング・サービス)
- 海洋サービス(maritimeservices:研究教育、船級協会業務、検査測度、安全管理、保険、ブローカー業務、行政サービス)
- 海洋機器製造・貿易(maritimeequipment manufacturing and trade)
ヨーロッパ全体として、海洋産業の産出高は1997年実績で、701億05百万ユーロ(約8兆4,126億円。1ユーロ=120換算、以下同)、総GDP比で1%を占め、154.5万人の雇用機会を提供している。
これらの結果によれば、イギリス、ドイツ、イタリア、ノルウェー、オランダ、フランスが6大海洋大国と呼べるが、もし内水面海運を除けばフランスが第5位になるという。このうち、ノルウェー(5.6%)、デンマーク(3%)、オランダ、ギリシャの4カ国が対GDP比2%以上でそれぞれの国家経済に占める割合が高い。また、国別の産業構造や特性もあって、ノルウェーでは海運、海洋作業、機器製造などが極めて重要な基幹産業となっているが、イギリスでは海運、海洋石油開発に関連する産業が、ドイツでは機器製造、造船・海運用機器、オランダでは港湾関連産業が、それぞれ重要な位置を占めている。
フランスの海洋産業
EU調査とIFREMERの調査では、分類区分の考え方で異なる点がある。それは、EU調査では「沿岸ツーリズムサービス:coastal tourism services」というフランス海洋産業では重要な地位を占めるものが分類上存在しない。また、「水産加工業:seafood processing」もない。逆に、EU調査分類では「内水面海運」が1分類として位置付けられている。そのことを念頭に入れて、フランス海洋産業の規模と市場構造を見てみよう。
同報告書によれば、1999年のフランス海洋産業の規模は、1,100億フラン(167億ユーロ、約2兆0040億円)で、雇用規模は42万人である。内訳で見れば、構造的にはそれほどの変化はなく、民間部門の方が950億フラン(150億ユーロ、約1兆8,000億円)を産出し、雇用規模も35万人である。その他の構造的特徴としては、(1)coastal tourismがほぼ半分近くを占めている、(2)次いで、水産加工、造船、海運がほぼ同様の規模で続いている、(3)海洋石油開発の関連産業がその重要性を増してきているが、雇用規模はそれほど大きくはない、(4)非民間部門の雇用の最大のものは海軍であるが、経済的価値の定量的把握は困難であるため、ここでは分析していない、という諸点をあげることができる。
フランス海洋産業の対GDP比は、オランダなどと比較すれば余り高いとは言えず、1%強であり、海洋産業に特別に力を注いでいるとは言えないとしているが、それはここでの海洋産業の定義と範囲のせいでもあると考えられる。とりわけ、港湾関係産業を取り込んでいないために、なおさらそのように言うことができる。しかも前回の報告書(1995-1997)にくらべて、伸び率の高い分野も見受けられるので、額面どおり受け取るわけにはいかないであろう。
(出典:cPolicy Research Corporation NV & ISL)


(出典:cPolicy Research Corporation NV & ISL)


(出典:cPolicy Research Corporation NV & ISL)





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