カテゴリーの細分化は弊害も

話を移住労働に戻そう。2018年の単年度事業は、2019年度には「国際移住の包括的情報発信」という3年継続の事業に発展した。
世界が直面している問題である国際移住と移住労働者、移民の関係について、国連は「多くの専門家は、移住の理由や法的地位に関係なく、定住国を変更した人々を国際移民とみなすことに同意しています。3カ月から12カ月間の移動を短期的または一時的移住、1年以上にわたる居住国の変更を長期的または恒久移住と呼んで区別するのが一般的です」との見解を示している。この〝定義〟に従えば、移住労働者は「国際移民」の範疇に含まれといえる。
これに対し、日本の定義は異なり、国際社会の認識とは大きなずれがある。自民党の労働力確保特命委員会による定義では、「移民とは入国時に永住権を有する者」であり、「就労目的の在留資格による受け入れは、移民には当たらない」としている。
移民を「労働移民」「家族統合」「難民」「永住者」などに分類する向きもあれば、「移民」と「難民」を明確に区別する見解もある。いずれにせよ、移民は多様化しており、 受け入れ国が多種多様な移民を受け入れている状況にあるのだ。
「個人的に思っているのは、移住者にしてもいろいろな人がいるわけじゃないですか。難民の人、難民申請をしている人、人身取引の被害者もいれば正規の労働者もいる。でもそういうようにカテゴリーを分けすぎると、結局どれにも入らないで、こぼれ落ちる人たちが出る。どんな理由で国境を越えたにしろ、そのほとんどの人たちが生活するために何かしらの仕事をしている。経済活動をしている人という意味では、移住労働者とその家族にはほぼ全員が入るわけで、そうした切り口がいいと思う。うまくカテゴリーに入れずに取り残されている人たちを、どうフォローできるか、具体的なプロジェクトに落とし込んでいけると思っています」
人と人とを繋ぐ
笹川平和財団でのこれまでを、振り返ってもらった。
「財団の仕事で楽しいのは、あらゆるレベルの人と仕事ができることです。しかもそうした人たちを繋ぐ役割を果たせることが、やっていてすごく楽しい。チャレンジングでもあるけど、自分の力の見せ所というところがある。先輩にも恵まれ、目標にできる人たちが周りにいたので、成長できた5年間だった。日本のフィランソロピー(社会貢献活動)に貢献できたと思う。移民、外国人、マイノリティー(社会的少数派)の問題に、今後も取り組んでいきたいと思っている。まあ、いつもいろいろやっているうちに、自分の腑に落ちるような感じになっていますから」
=敬称略