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国境を超えた市民社会の連携

 このベースライン調査は、笹川平和財団アジアの人口動態事業グループによる「国際移住労働と市民社会の役割」という事業の一環だった。この事業を担当し推進したのが、研究員の林茉里子である。調査を通じ分かったことは何か。林は次のように分析する。

 「各国の事情が違い、送り出し国と受け入れ国とでは、政府の利害も違う。特にASEANの場合は、送り出し国と受け入れ国の両方が混ざっており、受け入れ国で起こる問題というのは、その原因が送り出し国にもある。例えば、出発の前に正しい情報が伝わってないとか、働きに行くために多額の借金をしているとか、安いルートで行こうとしたら人身取引のような被害にあったといったことです。だからこそ行った先でも問題が起こっている。行く前と行った後に、送り出し側と受け入れ側がちゃんと連携できれば、未然に防げることもたくさんある。連携がとても大事です」

 重要になるのが市民社会の役割だ。

 「日本もそうですけれど、特に東南アジアの場合は政府レベルでの連携が労働者たちに行き届いているわけではない。ベースライン調査には、市民社会がその隙間を埋めるためにどういう取り組みができるかということも書かれており、お互いに参考にすればいい」

 ただ、ASEANの多様性という特徴は、各国の異なる市民社会の反映でもある。林は「目的は共通していても、国によって市民社会が動ける幅が相当違う」と指摘し、その一例として、シンガポールとインドネシアを比較してみせる。

 「シンガポールでのメイドさんに対する人権侵害がたびたびニュースになりますが、シンガポールのあるNGOの人が、外国人労働者への人権侵害に関する報告書を作った。ケーススタディとして個別の事例を書いたら、政府から『情報提供者は誰か』と、強い圧力がかかった。『匿名なので教えることはできない』と伝えたら結局、調査を総括していた方が仕事を辞めざるを得なくなったといいます。一方、インドネシアは市民社会がとても強く、地域活動をするときにリーダー的な役割を担おうとする。動ける幅が全然違う」
 林のアイデアはこうだ。

 「ラオスやベトナムもすごく難しく、市民社会の動ける幅が違う中で、この国ではここまでしか発言できない、動けないというときに、インドネシアやフィリピンの人々が助け、フォローするとか、シンガポールで声を上げられないときには、その問題をインドネシアから発信してもらうとか。そういう連携のネットワークをつくっておかなければならない。移住労働という国境を超えた問題に、個々の国だけで対応することはとても難しい」

 ASEANと日本における移住労働者の権利を保護し、移住労働をより安全なものとするために、市民社会間の連携、さらには市民社会と政府との連携を促し、そのための仕組みづくりをする―。それが笹川平和財団と林が推進する事業の柱になっている。

ASEANコンセンサス

(写真)インドネシアのジャカルタで、移住労働者の人権状況などについて報告する林茉里子

インドネシアのジャカルタで、移住労働者の人権状況などについて報告する林茉里子

 この事業の言い出しっぺは林である。財団に入った当初から移住、移民の問題に取り組みたいと考えていた。事業化が決まる以前の事業開発段階では、2017年7月にアジアの人口動態グループが発足した直後から、このテーマをグループの柱の一つにできるのではないかと、それまで個人的な関心の範囲で集めていた文献や各国の関連組織などの情報を見直した。そして、東南アジア諸国に出張し、現地の関係者からのヒアリングを通じ精力的に情報収集を行った。

 それから約4か月後の2017年11月、一つの節目が訪れる。フィリピンのマニラで開催されていたASEAN首脳会議で、「移住労働者の権利の保護と伸長に関するコンセンサス」が採択されたのであった。「各国の国内法、政策の範囲内で、国際条約などに基づく移住労働者の基本的権利を認め尊厳を守る」とし、具体的に権利を列挙。また、コンセンサスに基づき行動計画を策定することが挙げられた。ただ、コンセンサスに法的拘束力はない。

 林は情報収集する中で、地域レベルでの連携という点で大きな力を発揮してくれるのではと感じたヒューマン・ライツ・ワーキング・グループと共に、各国の取り組みをフォローアップすることにした。手始めにインドネシアのジャカルタで、ASEAN加盟10カ国のNGO関係者らを集めた会議を開催し、コンセンサスに対する市民社会の評価と意見を聞いた。この中で、コンセンサスに示されている移住労働者の権利をめぐり、各国の現状と問題点を把握する必要性が論じられ、その結果、実施されることになったのがベースライン調査であった。

「まずは国際機関や政府の公のデータや、NGOが独自に出しているレポートなどから情報を収集した。それ以上に重要なことは現場の声を聞くことだと考え、NGO代表などから、それぞれの国の状況を教えてもらった。政府の報告と実態とでは違う。例えば、トラフィキング(人身取引)の問題は、特に女性の被害者にとり、社会によっては人に言えないことなので、公のデータと実態との間には乖離がある。そうしたことをベースライン調査に入れるようにした。ただ、国によっては情報が乏しい。インドネシアやマレーシアは市民社会からいろいろな情報が入りますが、ラオスなどはほとんど入ってこない」

 林は立て続けに各地で会議を開き、ベースライン調査をツールとして活用し、対話と議論を深めていく。2018年11月、シンガポールでのASEANシビルソサエティ・フォーラムで林は、「日本はASEAN諸国からの労働者の受入国の一つであり、東南アジア諸国に進出する多くの日本企業が現地で移住労働者の雇用主となっているということからも、日本の市民社会には、ASEAN諸国の市民社会と連携し移住労働者の権利の保護と伸長に取り組む責任がある」と、日本の市民社会の立場から強調した。

(写真)インドネシア、フィリピン、ベトナムの市民活動家(写真左から)を招き、 話を聞いた(2018年11月、笹川平和財団ビル)

インドネシア、フィリピン、ベトナムの市民活動家(写真左から)を招き、 話を聞いた(2018年11月、笹川平和財団ビル)

(写真)2018年11月、笹川平和財団ビルで、移住労働問題に携わる市民活動家のフィリピン女性(手前)の話に耳を傾ける林茉里子

2018年11月、笹川平和財団ビルで、移住労働問題に携わる市民活動家のフィリピン女性(手前)の話に耳を傾ける林茉里子

 この年の11月25日から12月2日にかけて、日本への移住労働者の送り出しが特に多いベトナム、フィリピン、インドネシアから3人の市民活動家を招き、関東と関西の定住外国人支援団体の関係者らと意見や情報を交換した。この中では、日本での技能実習生が、高額な斡旋料を課されているといった問題も話し合われた。年が明け1月にはジャカルタで、3月にはマレーシアのクアラルンプールで、それぞれ外務省や労働省(インドネシア)、人的資源省(マレーシア)など政府の関係機関の政策担当者、NGOの実務家や研究者などを集めた会議も開催した。

 「送り出しに関係がある政府機関の人たちに来てもらい、政府はどういう法改正やプロジェクトを考えているのか、情報を公開し、市民社会の視点も入れてほしいと求めた。昨年の選挙で政権が交代したマレーシアでは、政府機関もこれまでより市民の声を聞く姿勢を見せているようで、NGOの人はすごく喜んでいました。『今まで、NGOが開いた会議に政府の人が顔を出してくれたことはほとんどなかった』と。政府の人も『改善しようと取り組んでおり、ベースライン調査にあるようなことも理解しています』と言いに来てくれた」

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