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オーシャンニューズレター

第78号(2003.11.05発行)

第78号(2003.11.05 発行)

中部国際空港"セントレア"の現況と運営体制 ~セントレアは「愛・地球博」の空の玄関です~

中部国際空港株式会社 副社長◆山下邦勝

中部圏(9県)の人口、製造品出荷額は、それぞれわが国全体の約1/6、約1/4を占め、東京圏、大阪圏に次ぐポテンシャルを有し、その経済規模はカナダやスペインをしのぐ。中部国際空港(愛称:セントレア)は、こうした中部圏における24時間運用可能な国際空港として2005年2月の開港を目指して、愛知県常滑市沖に建設が進められている。名古屋都心から約30~40分と交通アクセスにも優れ、中部圏と世界を結ぶゲートウェイになるべく、開業に向けた準備が行われている。

1.中部国際空港プロジェクトの仕組み

中部国際空港
2005年2月の開港を目指して工事が進められている中部国際空港(2003年9月22日撮影)

中部国際空港については、1998年7月に「中部国際空港の設置及び管理に関する法律」第4条に基づいて中部国際空港株式会社が、その設置・管理者に指定されました。中部国際空港株式会社は商法上の株式会社であり、(1)中部国際空港及び航空保安施設の設置及び管理、旅客及び貨物の取扱施設等の機能施設、(2)店舗等の利便施設の建設及び管理、(3)これに附帯する事業、を行うことを目的としています。総事業費は7,680億円、うち4割は無利子資金であり、国、地方自治体、民間からの出資、無利子貸付によってまかない、残り6割が有利子資金となります。資本金は1,024億円で、国、地方自治体、民間の出資割合が4:1:5の比率となっており、民間の資金と経営ノウハウを積極的に活用するものとなっています(図1参照)。

2.建設工事の進捗状況

■図1 中部国際空港株式会社の事業スキーム
中部国際空港株式会社の事業スキーム
■表1 中部の海外出張者の利用空港
訪問先利用空港
成田関西名古屋
アメリカ59%8%33%
ヨーロッパ59%8%33%
アジア15%7%78%
中国13%13%74%
オセアニア27%8%65%
全体34%8%57%

空港島の護岸工事は、建設地周辺の漁業補償の遅れから、当初の予定より約6ヶ月遅れの2000年8月に始まりましたが、空港島全体の埋め立てが完了してから旅客ターミナルビル等の建設に着手するのではなく、いくつかの工区に分けて埋め立てを行い、建設に時間を要する旅客ターミナル地区の埋め立てを優先して行うなどにより工期短縮に努めました。その結果、旅客ターミナルビルについては、2002年1月に着工しており、2004年9月に完成する予定です。また、空港用地全体の470haの造成についても2003年2月に概成したことから、滑走路や誘導路については、2003年2月から着工しており、2004年春に完成する予定です。

3.環境への配慮

中部国際空港株式会社は、2000年12月に、日本の空港設置者としては初めて、環境マネジメントシステムの国際規格であるISO14001の認証を取得するとともに、環境への負荷を低減するため、以下の取り組みを進めています。

海域環境への配慮:海域環境に配慮して、空港島の形状に曲線を取り入れ、空港島と対岸部との海域幅を拡げると同時に角には丸みを持たせて海流の妨げとならないようにしています。

生態系への配慮:自然との共生を図るため、空港島の護岸は、自然石などを用いた傾斜堤護岸を基本とするとともに、西及び南側護岸(約6.5km)に幅10mの岩礁性の藻場を創出し、海域生物の生息・生育環境に配慮しています。さらに環境保全に万全を期すため、環境モニタリングも実施し、その結果を公表しています。

航空機騒音への配慮:陸域への航空機騒音を軽減するため、滑走路の位置、飛行経路を工夫しています。航空機騒音にかかわる環境基準を超える地域はすべて海域にとどまると予測しています。

4.ユニバーサルデザインの導入

旅客ターミナルビルはバリアフリーをさらに一歩進め「年齢や障害の有無に関わらず、すべての人に使いやすい」というユニバーサルデザインに基づいた、誰にでも使いやすい施設を目指します。「ユニバーサルデザインの導入」にあたっては、ユニバーサルデザイン研究会を組織し、学識経験者や、コンサルタント契約を結んだ移動制約者の方々の団体からの様々な提案を頂き、具体的には、出発、到着の動線をそれぞれ1フロアにまとめることによる階層移動の煩わしさの解消、障害を持つ方々にも使いやすいエレベーターや動く歩道の設置などの工夫をしております。

5.コスト削減の取り組み

公正かつ公平な競争を原則とする「オープン&フェア」を基本方針に、空港諸施設の調達においてコスト削減のために様々な取り組みを行っています。具体的には、建設工事を熟知した事業者によるコンサルティングを実施し、市場価格の導入を促進したり、建設の信頼性・品質を落とさないで費用削減を可能とする施工方法を事業者から提案させ、実施する等の取り組みをしています。

現時点では、総事業費について、造成工事分で600億円程度、金利低下分等で340億円程度、施設整備の先送り分で60億円程度、総額1,000億円程度のコスト削減が可能になるものと見積っております。今後の建設工事においては、総事業費をさらに圧縮するよう引き続き、全力を傾注していきます。

6.今後の課題

セントレアの開港後に、いかに航空路線を充実させ、航空需要を高めていけるかという課題があります。表1は、地元自治体、経済界等で構成する中部国際空港利用促進協議会が2002年夏に実施した「中部の海外出張者の利用空港」に関するアンケート調査結果であり、愛知、岐阜、三重、静岡、長野の企業300社、約60,000人の海外出張者の行き先別の利用空港について調査したものです。アメリカ・ヨーロッパ方面へは、6割近くの方が成田空港を利用していますが、これは名古屋空港には欧米方面への直行便が少ないことが一因であると考えられます。

セントレア開港時、航空会社に新規乗り入れや増便をしていただけるかどうかは、今年度(2003年度)の現名古屋空港での実績が大きく影響します。そこで、地元自治体、経済界で構成する中部国際空港利用促進協議会が中心となり、名古屋空港の需要拡大に向けた「フライ・ナゴヤ・キャンペーン」を広く展開しています。

航空会社各社の最大の関心事は、地元住民及び企業によってどれだけ利用してもらえるのかという点であり、今後ともこうした活動等により航空需要の拡大に向け、積極的に取り組んでいきます。

7.最後に

21世紀の中部地域は「先端的産業技術の世界的中枢としての役割を果たし、全世界を対象に多様な交流が活発に行われる地域」となることが期待されています。

そうした中部と世界を結ぶゲートウェイとして、利便性・経済性に優れた競争力のある国際空港づくりを目指すとともに「お客様第一」を旨とし、魅力あるサービスの提供を通じて21世紀の国内外の航空ネットワークの発展に寄与できればと考えております。(了)

■中部国際空港(セントレア)の位置(クリックで拡大)

●中部国際空港株式会社http://www.centrair.jp

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