Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第78号(2003.11.05発行)

第78号(2003.11.05 発行)

編集後記

ニューズレター編集委員会編集代表者(横浜国立大学国際社会学研究科教授)◆来生 新

◆「秋刀魚喰ひ悲しみなきに似たりけり」(斎藤空華)。今年は秋刀魚が豊漁で、形も良く、はらわたの苦味、したたる油がこげる煙のにおいと、それらが絡まる身の淡白で濃厚でもある味わいが例年以上に豊かである。加えて値段の安さ。大根おろしにすだち、日本酒かビールでもあれば、つつましい人生の至福のひと時。悲しみはなきに似ることが大切。

◆山下オピニオンは、セントレアにかける中部圏の熱と意気込みを伝える。経済の低迷と財政難の中で大規模公共投資の無駄に批判が集中する逆風と、地域の期待の狭間にある当事者のご苦労がしのばれる。開港後、順調に業績が伸びて、悲しみなきに似る秋を楽しめる日が一刻も早く来ることを祈りたい。

◆酒井オピニオンは、国土交通省河川局、港湾局、水産庁の三水域連携による放置艇対策検討委員会の提言の紹介。ボートが金持ちの贅沢ではなくなったことが放置艇問題の原因であるとすれば、問題の発生自体はむしろ喜ぶべきことか。過去、自家用車の増大が路上駐車の規制の強化と車庫保持を義務付けた道と、プレジャーボートも同じ道を歩むことは避けられない。庶民には庶民なりの責任と義務を果たす心意気があり、それが悲しみはなきに似ることで足るとする心のあり方に通じるのであろう。

◆金田小学校の干潟学習を紹介する今井、磯貝オピニオンは、地の利を生かした総合学習への意欲的な取り組みを伝える。成長段階に応じて自主的な学習への意欲を高める工夫を凝らし、干潟について理解を深める取り組みは、他の小学校にとっても大いに参考になる。海洋国家日本の底辺を支えるのは国民一人一人の海に対する理解の深さである。このような教育を受けて育った子供たちが社会の中心になる近未来の日本には希望がある。

◆最後に、秋刀魚の兄弟分で、今や高級魚化しつつある鰯の再度の大衆化を願って。「潮の色変へて鰯の群れ来たる」(佐藤富士男)。(了)

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