Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第74号(2003.09.05発行)

第74号(2003.09.05 発行)

これからのクルーズに望む

シップス・ドリーミー 代表◆漆島 隆志郎

親子孫の3世代で乗船の場合や、ハネムーンあるいは結婚50周年記念旅行の人たちへの割引の特典。広島をベースにした、東と西の瀬戸内海クルーズなどなど。これからのわが国のクルーズは、自国の人を対象でしか成り立たないと言えるが、新しい企画を考えることで魅力的なクルーズはいくつも生まれるはずだ。

魅力的なクルーズを

Ship & Ocean NewsletterNo.65の座談会「海を旅し、船上で余暇を楽しもう」を読んで、私自身が客船及び船旅について考えていることを述べてみたい。

客船といえば、以前には「飛鳥」、「にっぽん丸」、「ふじ丸」、「ぱしふぃっくびいなす」、「おりえんとびいなす」、それと「おせあにっくぐれいす」等が活躍していた。いずれの船にも何度か乗船して楽しんだものだが、残念ながら不況のあおりを受けて、「ふじ丸」、「おりえんとびいなす」は日本チャータークルーズに移籍され、「おせあにっくぐれいす」も外国に売られ今は「クリッパー・オデッセイ」となっている。

これからのわが国のクルーズについでだが、はっきりいって自国の人しか対象にできないということである。なんといっても日本は物価が高いのだから、クルーズ料金も当然外国船に比べて高くなる。それはやむを得ないが、親子孫の3世代で乗船の場合、それにハネムーン、あるいは結婚50周年記念旅行の人たちには割引の特典があってもいいだろうと思っている。

クルーズのやり方としては現状のままでいいと思う。催し物ばかりで1日のスケジュールがいっぱいになっていて、船内のどこへ行ってもあまりにもにぎやか過ぎるカリブ海のクルーズに比べれば、はるかに落ち着きがあり、ゆとりが感じられる。ただし、オイローパをはじめとするドイツ客船や地中海をクルーズする客船等は今後も大いに参考にしてもらいたい。それと休暇が取りにくい人も多いので2泊3日程度のものをもう少し増やしてはどうか。

現在活躍している「飛鳥」、「にっぽん丸」、「ぱしふぃっくびいなす」は、いずれも世界一周を実施している。それについて、ずっと以前の船旅と少しダブらせてみたのだが、「あるぜんちな丸」(2代目、後の初代「にっぽん丸」)がまだ南米航路として就航していた頃、帰りは横浜でほとんどの人が下船してしまうので、横浜~四日市(荷役の関係で寄港)~名古屋~神戸の3泊4日の船旅を楽しんでいる人も多かった。今でも世界一周の帰途に東京か横浜で乗客の多くが下船する。そして最終港は神戸となっている。その間に寄港地として名古屋を加え、世界一周帰国便乗として2泊3日のクルーズを実施してみてはどうだろうか。もちろん3隻ともにである。乗船希望者もかなり出ると思うが。

ついでに内航客船についても触れておきたい。

もう十数年前になるが、瀬戸内海に「インランド・シー」という小型客船が就航していた。広島と神戸を結ぶもので、一度同区間を往復で乗船したのだが、大変楽しいものであった。特に瀬戸大橋では南から北まですべての橋の脇を通って、マリンスチュアーデス嬢による説明があったのが特に良かった。しかし、この船も中古であったせいもあって、すぐに引退してしまった。今、私の描いていることは新造船を就航させ、広島をベースにして1週間に2度、つまり東と西の瀬戸内海クルーズをすることである。東の方は前述した瀬戸大橋をメインとし、西は来島大橋を始めとする「しまなみ海道」をひとつひとつくぐり抜けることを呼びものとする。いずれの橋も説明を加える、漁業その他による難しい規制もあるだろうが、なんとしても実現させたい。

それともう一つ、長崎をベースにした場合、やはり1週間に2度で、こちらは南北へのクルーズが可能である。南は天草から甑島列島、北は、まず西の五島列島に向かってから北上し、平戸島、壱岐方面に出る。いずれも多島海で瀬戸内海同様、美しい風景を堪能できよう。

広島と長崎といえば、いずれも原爆の被災地で、なんだか暗いイメージのようではあるが、決してそればかりでなく、明るく楽しい面でも不思議な縁というか、大きな共通点があった。と、そのように考えたい。それを結びつけたものは船であり、クルーズであると......。(了)

■航行する「斑鳩」(想像図)
クルーズ客船「飛鳥」(海事プレス社)の図面を元に著者が作成したイラストレーション

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