Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第74号(2003.09.05発行)

第74号(2003.09.05 発行)

編集後記

ニューズレター編集委員会編集代表者(横浜国立大学国際社会学研究科教授)◆来生 新

◆70号の後記に「暑い夏が到来する」と書いたが、気象庁の予報もことごとくはずれた完全冷夏。早くも秋の台風シーズンである。せめて「台風の予報狂はず雨打ち来」(今泉貞鳳)と願いたいもの。貞鳳氏は、テレビドラマ「お笑い三人組」を覚えておられる世代には懐かしい講談師、俳優、俳人。師の東京の句に「生醤油の匂ひて佃島薄暑」。

◆金城氏のオピニオンは日本の島シリーズ第2弾で、南大東島からの便りである。島の歴史、風土と気象台の活動を伝える文章は遠い南の海の生気に満ちている。玉置半右衛門は鳥島のアホウドリを捕獲して、羽毛輸出で巨財を築いた八丈島出身の明治の実業家。改めて地図を見ると、伊豆諸島を東経140度線に沿って南下し、小笠原諸島を東に見ながら北緯26度で西転し、そのまま直進すると東経131度辺りで南北の大東島に出くわす。なお経度で4度ほど西行すれば沖縄である。南大東島での沖縄と八条の文化の融合も、航海の視点で見ると納得。

◆話はそれるが、カヌーでの伝統的な航海術によるポリネシアとハワイの航海との比較で、ついに沿岸を離れることがなかった日本人の伝統的航海術に触れるのは、池澤夏樹氏の『ハワイ紀行完全版』(新潮文庫)第9章の「星の羅針盤」。同書には玉置半右衛門の羽毛の話も登場。

◆橋本氏の投稿は、素人にはある意味でショッキングな内容であるが、船を安全に止める航海の基本技術「錨」が、何万年もの昔からの人々のさまざまな工夫の積み重ねの中で発達して来、今日なお工夫改善の余地があることを改めて教える興味深いもの。昭和29年の台風15号による洞爺丸の事故は、当時、北海道で小学生になったばかりの編集子の記憶に今も強く残る。

◆漆島氏の投稿は、65号のクルーズ座談会の反応。書手と読手の意見の交流を願う本ニューズレターの刊行の趣旨からして、読者からの反応投稿は大歓迎である。最後に、せめてもの夏の名残に「出航す遊船ジャズを銅鑼に代え」(塩川滋也)。(了)

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