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オーシャンニューズレター

第55号(2002.11.20発行)

第55号(2002.11.20 発行)

渋川海岸清掃ロボットコンテスト ~海への潜在的回帰を蘇らせる!~

岡山商科大学附属高等学校機械科◆小山 実

1998年に岡山の工業高校の呼びかけから始まった「渋川海岸清掃ロボットコンテスト」は今年で5回目を迎えた。美しい海岸を取り戻すために始まった手づくり行事だが、いま地域社会にもしっかりと根ざそうとしている。

ロボットコンテスト
今年で5回目を迎えた渋川海岸清掃ロボットコンテストには、中学校5校から5台のロボット、高等学校7校から11台の参加があった。

「渋川海岸が泣いています。心なき人により放置された花火の燃えかす、その回りには、空き缶やペットボトル、煙草の燃えかす等々が散乱しています。私の故郷である『渋川海岸』を汚さないでください」とのある新聞の投稿欄に釘付けになったのは、6年前のことである。

当時、某企業主催のロボットコンテストに、数十万円から数百万円を投入して工業高校の生徒が参加している現状があった。「ものを作り、作ったものが褒められる」機会が少ないこの頃、ロボットコンテストだけは時代を反映してか盛んである。しかも、中央で主催される行事ばかりが話題になりがちである。それらに疑問を持ち、「地域社会に貢献できること」を考えていた矢先に、先の投稿欄を読むことになったのである。

早速、現地へ赴き、悲しいながらもその実態を確認しつつ、私達にできることはないかと暗中模索で、渋川海岸を歩き回った。「美しい海岸にしたい」「環境教育が主流となる」「機械科での地域貢献」とのブロック・チャートから「海岸清掃ロボット」とのイメージが浮かび上がった。『しかし、本校だけでは学校の宣伝にとどまり、対外的なインパクトもない。それでは、コンテスト形式にしてやってみよう』と行動してみた。

まず、海岸の清掃を市内で受け持つ市の観光協会に話を持っていったところ、『協会でも、渋川海岸の清掃のためにゴミ回収車両機械を購入したが、全然役に立たなかった。その経験があるから、あまり積極的には協力できないが、場所の提供はしてもいいですよ。どうせやるなら「海開きの日」にすれば来賓も集まるからいいでしょう』との回答を得ることができた。

その話を学校に持ち帰り、他の先生方に賛同を得ようと話をしたところ、間髪入れず『そんなことできる訳ない。やめとけ! 無駄だ!!』の連呼、連呼。しかし、私はあの投稿文の悲痛な叫びと現地調査での実感から、どうしてもやらなければならない、と決意した。早速、協議内容の検討に始まり、時間外を使って会場設営や各学校への参加依頼等の準備を始めた。

そして、翌年1998年に「第1回玉野市渋川海岸清掃ロボットコンテスト」が開催された。岡山県内の中学校3校で5台、工業高校2校で4台。歴史に残る1頁を開くことができた。この成功により、本校の機械科の先生方の意識も変わり、毎年、ボランティアで運営に協力してくれるようになった。

第5回を迎えた本年は、海浜から海上のブイを回り、再上陸後、波打ち際におかれたペットボトルと空き缶を制限時間内にどれだけ集められるかというルールで、水陸両用型、水陸分離型のロボットに挑戦してもらった。初めてロボットが海に入ることになり、波にさらわれればロボット自身がゴミになるという懸念もあったが、波の力、自然の力を相手にした時、意外な展開があり、自然とどのように折り合ったロボットを設計、工作するか、生徒達はいろいろなことを考えさせられたに違いない。山間内陸地方のある高校から参加した生徒が『海を見たのはこれで4、5回目、海は畏(こわ)い、波が上がったり引いたりするのを忘れていた。砂浜がこんなに柔らかくて埋もれるものだとは知らなかった』といっていたのが印象的である。(了)

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