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オーシャンニューズレター
第556号(2023.10.05発行)
事務局だより
瀬戸内千代
◆長い夏が終わり、海釣りに出やすい季節になりました。今号の3本は、海洋酸性化対策、森川海の環境保全、天然サンゴ資源の乱獲防止など、いずれも海洋環境の人為的な悪化を防ぐためのご寄稿でした。過去号にご寄稿※1があった通り、遊漁もまた、健全な環境あってこその楽しみです。遊漁の解禁日は海域や漁協によって細かく定められていますが、海釣りに川釣り同様のライセンス制度はなく、遊漁券の販売も普及していません。水産庁からのご寄稿※2に「わが国にはレジャー・レクリエーションという観点から釣りを規律する制度がない」とあった約20年前から、状況はあまり変わっていないようです。海釣り客のマナーが問題になっているビーチや港も少なくありません。施設の維持や海洋環境保全の資金確保のためにも、ルールの設定を求める声が、釣り人たちからも上がっています。
◆季節が良いと月に3回ほど船釣りに行くという当財団職員の話では、2022年は全国的にマダコの当たり年だったそうです。近年の変化を聞くと、瀬戸内海で極端に減少したサワラが関東近辺でも釣れなくなり代わりに日本海で釣れている、関東では温かい海を好むブリ系の青魚や太刀魚が年中釣れるようになったけれどマサバは大きな個体が消えた、3年前はたくさんいたキスが最近は釣れない、東京湾奥で釣れていたマコガレイが幻になりつつある、イルカやクジラが東京湾に入るようになったなど、いろいろな情報をくれました。個々の変化の要因は科学的な知見が積み上がるまではっきりしませんが、全国の釣り人は「海の今」を肌で感じています。
◆政府も、水産物の資源管理に役立てることを目指して、水産庁ホームページの「遊漁の部屋」で釣果登録への協力を呼びかけています(図)。情報提供を通して誰もが「社会革新のための市民科学」※3に参加できる仕組みは、民間のアプリも含め今後増えていきそうです。(瀬戸内千代)
※1 高本采実著「釣りを持続的に楽しむための制度と課題」本誌第525号(2022.6.20発行)
https://www.spf.org/opri/newsletter/525_2.html
※2 桜井政和著「釣り人の費用負担について」本誌第127号(2005.11.20発行)
https://www.spf.org/opri/newsletter/127_1.html
※3 小堀洋美著「市民科学─変革を目指すアプローチと海に関わる事例紹介」本誌第543号(2023.3.20発行)
https://www.spf.org/opri/newsletter/543_2.html
水産庁「遊漁採捕量実態調査について」のリンク先。 左は「LINE 公式アカウント」、右は「LINEを使用しない報告先」(
https://www2.yugyo-saihoryo.jp/
)
第556号(2023.10.05発行)のその他の記事
海洋酸性化とその対策
東京大学大気海洋研究所教授◆藤井賢彦
森と川の変貌と海岸環境の保全
北海道大学大学院農学研究院教授◆中村太士
持続可能でインクルーシブな人工ライブロックづくり
(株)CORERAL代表◆徳永 智
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