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オーシャンニューズレター

第3号(2000.09.20発行)

第3号(2000.09.20 発行)

報告書「マラッカ海峡の沿岸・海洋資源のもつ経済的価値」

インフォメーション

"Total EconomicValuation:Coastal and MarineResources in the Straits ofMalacca"と題するレポートが、フィリピンに事務所を置くGEF/UNDP/IMO(※1)のRegional Programme for thePrevention and Management  ofMarine Pollution in the East AsianSeasから、1999年9月付けで刊行されている。本文約25ページ、付属資料類を含めても約60ページの冊子といってもよい報告書である。

このレポートで注目されるのは、タイトルにも表れているように、経済的価値について定量化を試みている点である。しかも、通常着目される市場における利用価値=市場価値(usevalue=marketvalue)のみならず、エコシステムが果たす役割などの市場では十分数値化されにくい非利用的価値=非市場的価値(non-usevalue=non-marketvalue)についても同様に検討が試みられている点である。以下、本レポートの内容をかいつまんで紹介する。

マラッカ海峡3カ国(インドネシア・マレーシア・シンガポール)の沿岸・海洋資源のもつ経済的価値は、結論から言えば、グロスで68.3億ドル。ネットでは51.3億ドルで、その内訳は市場価値が14.7億ドル(28.7%)、非市場価値が36.6億ドル(71.4%)となっている。

多数の有益な図表類が掲載されている本レポートでは、沿岸・海洋環境からもたらされる純益(netbenefits)を、マングローブ(図1)、干潟、シー・レーン、サンゴ礁、海岸、藻場、海草、漁業・養殖業の8つに区分してその構成比率を算出しているほか(図2)、利用・非利用価値については、漁業、養殖業、ツーリズム、炭素貯蔵、海岸防護、海運・航路、生物多様性の7つに区分して金額を算出している(図3、表1)。本文ではこれらの個々の試算数値が表記されているのが大変興味深い。非利用価値の比率が非常に高いことから、市場では定量化されない重要な価値が見過ごされ、資源管理ひいては海洋管理の意思決定過程で過小評価されることによる弊害がいかに大きくなってしまいかねないか、警鐘をならしている。

(表1) エコシステム区分別 - 国別の経済価値(クリックで拡大)

 

編集部注
※1)
GEF =Global EnvironmentFacility(地球環境ファシリティ)
UNDP =United Nations DevelopmentProgram(国連開発計画)
IMO =International MaritimeOrganization(国際海事機構)
いずれも国連関係の下部機構

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