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Ocean Newsletter
第3号(2000.09.20発行)
- 東京大学大学院 工学系研究科 環境海洋工学専攻教授◆前田久明
- 東京大学大学院 総合文化研究科 広域システム科学科◆清野聡子
- JEAN・クリーンアップ全国事務局◆小島あずさ
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- ニューズレター編集委員会編集代表者 (横浜国立大学国際社会学研究科教授)◆来生 新
街のゴミが海を汚す
~「海のゴミ白書」を作ってほしい~
JEAN・クリーンアップ全国事務局◆小島あずさ今や地球上で、ゴミのない海岸はほとんど存在しない。海上にも大量の破片化したゴミが漂う。自然に戻らないゴミを出すのは人間だけであり、きれいな海を取り戻すことは私たち人間の務めである。
海辺を訪れて、散乱するゴミを目の当りにし、がっかりした経験を持つ人は多いと思います。でも、そのゴミがどこから来たか考えたことはありますか?
海岸のゴミは、海岸に来た人が残していくと思われがちですが、実はそれはほんの一部。川などの水路を通じて、上流の街から流れ込むゴミが圧倒的に多いのです。つまり、普段の暮らしから出るゴミが、遠く離れた海岸を汚していると言うわけです。さらに、ゴミは海流にのって世界各地に流れていきます。ハワイ諸島周辺には日本からのゴミが大量漂着し、コアホウドリのひながそれらを誤食して命を落としたりしています。逆に日本海沿岸には大陸からのゴミがたくさん漂着します。拾っても拾ってもきりのない、迷惑な訪問者です。
海のゴミの6~8割を占めると云われるプラスチックゴミは、紫外線や風や波によって劣化しやすく、どんどん細かくなっていきます。ある調査によると1km2あたり980万個、という恐ろしい数にのぼる海域さえあると言います。
自然に戻らないゴミを出すのは人間だけ。でもそれをちゃんと回収したり、再利用したり、元から出ないようにすることができるのも私たちだけです。周囲を海に囲まれた国に暮らし、食をはじめとして様々な恩恵を海からいただいている私たち。何をするでもなく、浜辺を歩くだけで心が穏やかになる経験は誰でもが持っていることでしょう。海に行くことがなくても、意図的なぽい捨てなどしていなくても、使い捨てに慣れた暮らしからあふれたゴミが、海を汚しています。「私は捨てていない」と見過ごせる問題ではありません。ぜひ一度、近くの海岸に足を運び、海岸を汚しているゴミを自ら拾ってみてください。そしてそれがどこから来たか、どうしたら出さないようにできるかを一緒に考えてください。
私たちは、世界各国の人たちと共同して、海岸のゴミ拾いをしながらデータを集める活動を続けています。単なる清掃活動に留まらずに、各国同一の手法でデータを分析し、海岸のゴミ問題を根本から改善しようというものです。
活動を通じて色々なことを学びました。国の機関も動きはじめました。環境庁は廃プラスチックによる海洋汚染防止対策をまとめましたし、建設省は海岸のゴミ調査を開始し、運輸省は港の清掃を奨め、海上保安庁は「海のモニター」制度を設け、水産庁は漁場保全活動を展開しています。さらに海辺の町も海水浴のシーズンを中心に色々な活動をしているのは皆さんもご存知です。しかしながらなぜ一緒になって運動をしないのでしょう。なぜ日本には「海のゴミ白書」がないのでしょうか。
世界中の人たちが心をひとつにして海をきれいにするための「国際海岸クリーンアップ」は今年も行われます。たくさんの海辺で調査とクリーンアップをすることが、問題解決の鍵を握っています。どこでもどなたでも参加できますので、お気軽に「キャプテンマニュアル」をご請求ください。
●JEAN・クリーンアップ全国事務局ファックス:042-324-8252、メールアドレス:Jean@jca.apc.org
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