Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第346号(2015.01.05発行)

第346号(2015.01.05 発行)

編集後記

ニューズレター編集代表(総合地球環境学研究所名誉教授)◆秋道智彌

謹賀新年
◆2015(平成27)年の元旦にあたり、読者各位がつつがなき新春をお迎えになったことと思う。とはいえ、手放しで喜んでばかりいられる状況にはない。海洋総合政策本部参与会議座長の宮原耕治氏は新年にあたり、日本が海洋政策面で果たすべき諸問題を通覧し、本年が未来につながる重要な年になることを明言されておられる。とくにエネルギー問題で日本の海洋政策が果たす役割の重大性を指摘されている。傾聴に値する論点であろう。
◆2014年は海をめぐってさまざまなことが起こった。ハーグ裁判で日本の調査捕鯨が違法との烙印を押され、捕鯨関係者をはじめ多くの日本人が肩を落とし、あるいは判決の理不尽さに憤った。80数種以上現存するクジラの仲間をすべて保護すべきとする見方は生物の多様性や人間との関わりをあまりにも単純化したもので、科学的とはいえないし、歴史や文化を踏まえたものでもない。かたや、世界ではやっている海洋保護区の提案は生物多様性の保全を謳うものとして評価すべきではあるが、それが人間との関わりや生物群集の変動を無視したものであれば将来性に問題の多いことは明らかだ。
◆2013年、島根県隠岐諸島が世界ジオパークに、三陸海岸が日本ジオパークにそれぞれ登録された。今後の地域振興や観光産業、東北での震災復興など、それぞれの公園が抱える問題は多様であり、海洋公園や保護区についての一般的なモデルは存在しない。また2014年の春、沖縄の慶良間諸島が国立公園となったが、地元住民との協議や利用のルールをめぐる議論が十分になされたと聞く。しかし、米軍の普天間基地の辺野古移転の話となると、にわかに状況がちがってくる。那覇空港の第2滑走路建設をめぐる埋め立てについても、自衛隊による那覇空港利用の問題とからんでくるので自然保護だけの争点とはならない問題の深さがある。
◆東京工業大学名誉教授の本川達雄氏はかつて沖縄の瀬底島で毎日のように海に潜り、海の生き物の多様性にふれたことで、世界を見る目が変わったと述べておられる。人間にとって有用、有害なものだけに目がいきがちであるなか、役に立つかどうかさえもわからない生き物への視座が多様性の理解につながるとする指摘に私も同感である。
◆生物ではないが、海底に眠る資源について世界は熱い目を注いでいる。石油・天然ガスについては、中国が東シナ海、南シナ海で展開する拡張主義の傾向が昨年はたいへん顕著となった。メタンハイドレートについては本誌でも取り上げている(25号131号150号参照)。一方、東京大学名誉教授の浦辺徹郎氏によると、海底熱水鉱床やコバルトリッチクラストの開発をめぐる技術や採掘権、ライセンスなどの問題が山積しているという。深海底の鉱物資源をめぐる海のジパング計画の夢は次世代に向けたものとして胸膨らむ話題であった。
◆日本の海をめぐる未来への可能性と現実の諸問題に取り組む実践知と適格な判断力を発揮する年にしたいものだ。(秋道)

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