Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第344号(2014.12.05発行)

第344号(2014.12.05 発行)

編集後記

ニューズレター編集代表(総合地球環境学研究所名誉教授)◆秋道智彌

◆中国船による日本の領海内での赤サンゴ密漁はいまだ終息することなく推移している。領海はいうに及ばず、他国の島嶼に無断で立ち入れば即、強制排除の対象となる。海洋の領有は国際法に準拠してなされるのが常識である。海洋政策研究財団島嶼資料センター長の髙井晉氏は、本誌で竹島、尖閣列島をめぐる正統な領有権の主張について日本の発信力の弱さについて指摘されている。誠意ある対応で何とかなるという思いに盲点がなかったか。尖閣国有化が軍国主義の復活との批判に臆することはない。国際法に依拠した正統な主張であることの意味を深く認識すべきであろう。
◆海面下の水中文化遺産についても日本の遅れが露呈した。東京海洋大学の岩淵聡文氏は、日本が水中文化遺産保護条約に批准せず、海の文化資源にたいする国の取り組みがきわめて脆弱かつ後発的であると指摘されている。海の自然遺産については小笠原諸島、慶良間諸島と目立った動きがあったが、水中の文化遺産となると残念ながら状況は悪い。沈船といっても金塊を満載した船を指すのではない。本誌(第330号参照)で元寇のさいの沈船について取り上げたが、現状では第二次大戦で沈没した多くの日本船をめぐる議論が浮上するに違いなく、国による早急な対応が望まれる。
◆領海問題や水中文化遺産と遅れをとったわが国の海洋政策がもう一点、見習うべき点が食の未来にかかわる水産養殖業へのてこ入れである。みなと山口合同新聞社の佐々木 満氏の指摘通り、世界の水産養殖は一昔前とは異なり格段に進歩、発展している。なかでもノルウェーは国を挙げての養殖推進の取り組みにより、世界をリードするまでになり、養殖研究への支援も世界を巻き込んで進められている。水産業の低迷を踏まえた革命的な展開がいまこそ国の指導力を背景に進められることを心から望みたい。
◆以上の3篇の主張は個別に検討されるべきではなく、総合的な取り組みとして進められるべきであろう。師走の風が身にしみるなかであっても、海への総合的な政策推進にふるい立ってのぞもうではないか。(秋道)

第344号(2014.12.05発行)のその他の記事

ページトップ