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オーシャンニューズレター

第342号(2014.11.05発行)

第342号(2014.11.05 発行)

カッターレースを通したウォーターフロントの賑わいづくり

[KEYWORDS]神戸港/港湾振興/地域の取り組み
一般社団法人神戸港振興協会参与◆森田 潔

神戸港では市民と港を結ぶさまざまなイベントが一年を通して開催され、市民が憩うウォーターフロントとして賑わっている。そのなかでも36年の歴史をもつカッターレースは、今年全国から106チームも参加したほど大きな規模へと成長した。
今後もカッターレースを通した、ウォーターフロントでの賑わいづくりを神戸港から広く発信続けていきたい。

海上輸送の変貌と神戸港

海上輸送のコンテナ化進展とともに、港では直接貨物を積み込む在来船や艀が徐々に姿を消した。さらにコンテナ船の大型化によってコンテナターミナルも沖合へ移転した。今日では、これまで在来船が利用していた埠頭は再開発によって市民が憩う親水ゾーンとして機能している。
現在、神戸港では神戸大橋を起点に東側を物流ゾーン、西側を親水ゾーンと位置づけている。親水ゾーンであるメリケンパークやハーバーランドではさまざまなイベントが一年を通して開催され、市民が憩うウォーターフロントとして賑わっている。

市民とみなとを結ぶ事業

在来船の時代、貨物の積み下ろしを行う埠頭や突堤の出入口には税関の監所があり、一般市民は立ち入ることが困難なエリアだった。神戸のように市街地と港が近接している都市であっても関係者以外は近づくことすらない状況にあった。そんな状況下、1958(昭和33)年9月2日神戸港における「港勢の拡大とポートサービスを充実させる事業」と「市民とみなとを結ぶ事業」を主たる目的とした神戸港振興協会が設立された。前者はポートセールス、後者は今でいうウォーターフロントの賑わいづくりである。ところが、市民向けのイベントは数年に1度の練習帆船や神戸港の見学会、年に数回の進水式見学会程度のものしか行われていなかった。

第1回神戸港カッターレースの開催

■神戸港カッターレースの様子

1978(昭和53)年、他港では行っていないようなイベントを神戸港で開催できないか? という議論になった。そんな中、ロンドンのテムズ川で行われた「はしけレース」(小型はしけを1本の竿で動かしてタイムを競うレース)を紹介する記事が目にとまった。そこにヒントを得て神戸商船大学(現:神戸大学海事科学部)が所有していた6m型木製カッターを使ったカッターレースを神戸港で実施することになった。場所は全長500m×5コース分100m幅の海域がとれる新港第4突堤東側岸壁沿いとした。開催日を1979(昭和54)年5月の第2日曜日とし、神戸商船大学の杉浦昭典教授や鈴木三郎助教授の協力の下、競技規約、実施要領を作成し、進徳丸保存会や海技大学校、神戸商船大学カッター部、神戸市港湾局などの全面的な協力のもとスタートした。
当時、神戸市広報紙『こうべ』やプレスリリースで参加者を募ったが、カッター自体が世間ではまったく知られておらず、応募はほとんどなかった。そこで神戸に所縁ある、船会社や代理店、港運会社や海貨事業者に個別にも出場依頼を行った。そうしたこともあり男子16チームと女子4チームの合計20チームが出場。そのうち2チームは、在神外国人チーム「神戸レガッタ&アスレチッククラブ」や「中国港湾研修生チーム」などが参加する神戸らしい国際色豊かなレースとなった。

神戸港カッターレースの変遷

1981(昭和56)年には9m艇を使った折り返し700mの特別レースを追加した。1987(昭和62)年からは神戸開港120年祭の主会場となったメリケンパークに開催場所を移しての開催となった。1995(平成7)年、神戸港は阪神淡路大震災にて壊滅的な被害を受けた。その影響で、同年のカッターレース開催を中止することを決めたところ、市民から開催を求める声が多く上がり、神戸港より4キロほど西にある須磨海岸にて開催した。翌年には再びメリケンパークにて開催できたが、その翌年は復旧工事の関係から再度場所を変えての開催となった。
2009(平成21)年に行った第31回大会からは、参加者の高齢化に対応して、小型のカッターを用いた漕ぎ手6名の合計年齢が250歳以上というシニアレースを追加した。さらに、参加チーム数の増加に対応するため、当初は3位までが表彰対象だったが、5位までに順次表彰対象を拡大していった。

カッターレースの規模の拡大~全国に広がる~

■神戸港でのメリケンフェスタの様子

神戸港カッターレースは年を追うごとに活況を呈し、第1回大会では20チーム参加頂いていたのが、第15回大会では89チーム、平成26年度の第36回大会では全国から106チームも参加頂くまでになった。
こうした、36年の歴史の中で得たカッターレースの開催経験やノウハウは実施要領としてまとめ全国の地方自治体や港湾機関へ提供している。今日、横浜港をはじめ四日市港、大阪港、広島港など全国のウォーターフロントでは一大イベントとしてカッターレースが開催されている。
2017年に神戸港は、開港150年を迎える。これまでの開港130年、140年といった節目の年には記念カッターレースを開催してきた。このレースでは全国各地のカッターレース優勝チームによる招待レースを行ってきた。現在計画している開港150年祭では、神戸港では2度目となる「海フェスタ」の開催地として誘致に名乗りを上げている。その中で、全国のカッターレース開催地からの代表チームの参加を得て、全国大会を開催したいと考えている。
神戸港における賑わいづくりは、当初3名というとても小規模な人数から始まった。しかし、神戸港・神戸の街を元気にするということで段階的にイベントを充実させていっている。こうした取り組みが日本各地のウォーターフロントにおいて広く開催されていっていることは大変なやりがいを感じる。
今後もカッターレースを通じた、ウォーターフロントでの賑わいづくりを神戸港から広く発信し続けていきたい。(了)

■神戸港におけるイベント開催例


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