Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第342号(2014.11.05発行)

第342号(2014.11.05 発行)

編集後記

ニューズレター編集代表(総合地球環境学研究所名誉教授)◆秋道智彌

◆ウナギの絶滅危惧、調査捕鯨の禁止、マグロ漁獲制限など、海の資源をめぐる問題が噴出している。スーパーの魚売場で買った「切り身」の魚をそのまま電子レンジやオーブンで調理して食べることの多いご時世である。一方、地魚の活用、地産地消など、沿岸資源の有効利用について全国でさまざまな取り組みがある。そうしたなかで、体験を通じた海の学習の機会をもつことはとても重要であろう。このたび、新松浦漁業協同組合女性部(長崎県)が、「漁村文化の伝承普及・地域活性化」を通じた水産振興の功績により国の進める「海洋立国推進功労者」として今年7月に表彰された。同組合女性部部長の荒木直子さんによると、全国都市部の子どもたちを受け入れる民泊誘致が功を奏し、この10年で当初の10倍にあたる3万人を年間に受け入れるまでに成長した。松浦での体験を持ち帰った子どもたちの心に何が育まれたのか。この先大いに期待したい。地元の地域振興にも波及効果があるということで長崎県副知事が表敬訪問されたと聞く。全国の学校と各地域の連携が進むことは今後の海洋教育のモデルにつながると確信する。聞いてみたかったのは民泊先での食事の献立である。心のこもった食事はグルメ番組などではとてもおめにかかれない内容とおもうからだ。
◆海洋教育についての国際的なプログラムがこの夏、東京海洋大学で開催され、国内外128名が参加された。担当された同大学の佐々木 剛先生は岩手県宮古のご出身であり、2011年の東日本大震災からの復興を念頭に4つのテーマを設定された。沿岸における災害からの復興に果たす海洋教育の意義と貢献についていえば、この会議の成果が東北4県における現場での取り組みを世界へとつなげる橋渡しとして何らかの役割を果たすことが最大の関心事である。前回、この会議がチリで開催されたことを考えるとその思いは募るばかりだ。
◆神戸も19年前に阪神淡路大震災で大きな痛手をこうむった。神戸では復興が急速に進んだ。心の傷はそうやすやすと癒えることはないが、それでもさまざまなイベントが神戸を盛り上げてきた。神戸港振興協会参与の森田 潔さんは神戸港のウォーターフロントの賑わいづくりに貢献されている。それにしても神戸ではずいぶんと海の催し物が多いことを実感させられた。カッターレースなどは欧米ではさかんだが、日本ではまだまだと思っていた。しかし、神戸の取り組みは成長過程にあり、心強く思う次第である。今をさかのぼる慶応3年12月7日(1867年1月1日)西欧列強の要求に応じてようやく神戸(兵庫)港が外国に開港した。2017年には開港150年を祝うイベントが計画されているというが、歴史を踏まえた、つまり日本の近代の曙とその後の意味を深く見つめなおし、海と日本人との関わりを考える機会になればとおもう。松浦市の周辺は中世には蒙古襲来の現場であった。宮城県の鮎川にある月ガ浜は支倉常長がローマを目指した浜であり、今回の津波で大きな被害を受けた。歴史の中で日本の浜と海を考える機会としたい。(秋道)

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