Ocean Newsletter
第32号(2001.12.05発行)
- 日本大学名誉教授◆佐久田昌昭
- 横浜国立大学 国際社会科学研究科 教授◆来生 新
- 琴引浜の鳴り砂を守る会◆松尾省二
- インフォメーション
- ニューズレター編集委員会編集代表者((社)海洋産業研究会常務理事)◆中原裕幸
欧州における沿岸管理政策統合の動き
インフォメーション
2001年8月、EC(欧州委員会)環境・原子力安全・民間保護総局は小冊子「EUFOCUS on Coastal Zone」を作成した。その狙いは、EU加盟国の沿岸域における政策の統合を推進するためである。
総延長89,000kmの海岸線を持つ欧州の沿岸域圏は、数世紀に亘る独自の歴史と文化を持ちつつ、経済社会に重要な役割を果たしてきているが、沿岸域は相互に連接し、かつ、沿岸域に流入する河川は国を越えて広く分布し、一国だけでは沿岸域の問題に対処できない所にきているのが現実である。
本冊子によると、水質悪化、水量減少、浸食加速、汚染蓄積、漁業資源喪失などの問題に取り組む一方、観光開発計画のずさんさ、漁業、交通網、急速な都市化、自然破壊などの問題を提起している。また、汚染問題では、エリカ号事故後にECが提案した政策と新しく作成された水質関連通達「TheWater FrameworkDirective」を推進し、欧州の水質保護は個々の河川流域を基盤とする沿岸汚染対策が重要としている。
ECの今般の動きは、1995年~2000年まで総予算16億円で実施された「欧州の沿岸域総合管理デモンストレーションプロジェクト」がベースになっている。
同プロジェクトは、欧州の沿岸域を6つの領域(バルト海、北海、北西ヨーロッパ、大西洋、アルプス流域の地中海、中央の東地中海)にグループ化し、図に示す35の沿岸域で、(1)沿岸域の持続的発展が、欧州で実現するために必要な技術的情報の提供、(2)沿岸域の発展に関係する当事者間の討論の場の提供等、欧州圏の政策上のコンセンサスを得ることを目的として推進されていたものである※1 。

※1 :同プロジェクトの全体計画および、それぞれの沿岸域における目的などは、
http://europa.eu.int/comm/environment/iczm/home.htm
http://europa.eu.int/comm/environment/iczm/demopgm.htm
で見ることができる。なお、シップ・アンド・オーシャン財団海洋政策研究部において詳細な資料が用意してある。
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