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第317号(2013.10.20発行)

第317号(2013.10.20 発行)

「船舶事故ハザードマップ」について~地図から探せる事故とリスクと安全情報~

[KEYWORDS] 運輸安全委員会/船舶事故ハザードマップ/事故再発防止
国土交通省運輸安全委員会事務局次席船舶事故調査官◆金子栄喜
国土交通省運輸安全委員会事務局統括船舶事故調査官◆吉岡照夫

運輸安全委員会は、これまでに発生した船舶事故等の発生状況をビジュアル化した「船舶事故ハザードマップ」を平成25年5月からインターネットで提供している。マップは事故情報とハザード情報に分かれており、リスクの高い海域が分かるとともに、事故等調査報告書の活用により原因分析や再発防止策を確認することができる。船舶関係者に、事故再発防止のツールとしても活用していただきたい。

はじめに

運輸安全委員会は、2008(平成20)年10月1日に航空・鉄道事故調査委員会と海難審判庁の原因究明部門を統合再編して発足し、今年10月で5年目を迎える。
この間、航空、鉄道および船舶の事故・重大インシデント※1が発生した原因や事故による被害の原因を究明するために調査を行い、調査の結果をもとに調査報告書を公表し、必要に応じて関係行政機関の長や事故等の原因関係者へ勧告したり、意見を述べることにより事故等の再発防止を求めてきた。

船舶事故発生状況のビジュアル化

当委員会では、これまでに公表した船舶事故等の調査報告書約5,000件のデータおよび海難審判庁が1989(平成元)年から2008(平成20)年までに言い渡した裁決のうち、衝突、乗揚事故約10,000件のデータを基に、船舶事故等の発生状況をビジュアル化し、どこで、どのような事故が発生しているか、ひとめで分かる「船舶事故ハザードマップ」※2をインターネットサービスとして、2013(平成25)年5月末から提供を始めた。
船舶事故ハザードマップの運用に当たっては、設計段階から海事・水産・教育・レジャー等数十機関の関係者と意見交換を行い、実際に船舶の運航に携わる関係者の利便性を考慮した。また、国土交通省港湾局、海上保安庁、水産庁、(独)海上技術安全研究所等の協力を得て気象・海象、航路、漁場、交通量等についても情報を表示できるシステムとした。

船舶事故ハザードマップの基本的機能

船舶事故ハザードマップは、「事故情報」(図1)と「ハザード情報」(図2)に分かれており、「事故情報」では、地名、発生年月、発生時間帯、事故等種類、船舶種類、総トン数、キーワードによる検索が可能となっている。次に表示ボタンを押すと、地図内に検索結果が表示される(図3)。事故等のマークをクリックすることで事故情報の概要を見ることができ、さらに、事故名をクリックすることで事故調査報告書を確認することができる。
また、重大な事故については、事故原因をよりよく理解していただくために、衝突までの状況をコンピュータグラフィックスにより再現した動画や、漁船の転覆等の水槽実験の映像を見ることができる事故調査報告書もある。
次に、「ハザード情報」では、航路、推薦航路、AIS情報に基づく交通量、漁場・漁法等の情報を選んでマップに表示できるほか、気象・海象情報では、気象庁のアメダスや海上保安庁のライブカメラへのリンクにより、リアルタイムで安全に関する情報を確認することが可能となっている(図4)。


ハザードマップと事故再発防止

活用例として、来島海峡での事故発生状況を見ると(図5)、航路の出入口では衝突事故が多発しており、屈曲部では衝突事故に加えて乗揚事故も多発していることが分かる。
このように調べたい海域におけるリスクの高い箇所が分かるとともに事故等調査報告書の活用により、原因分析や再発防止策を確認することができることから、海事・水産関係者からは、船員教育・安全講習会の資料として利用したい旨のご意見をいただいており、船舶関係者に、それぞれの目的に沿った事故再発防止のためのツールとして活用していただくことが望まれる。

今後の取り組み

今回運用を開始した船舶事故ハザードマップは、これで完成ではなく、情報の充実を図るため、関係者から要望の多かった英語版の運用を9月末から開始した。また、運輸の安全性向上のため、船舶事故情報の総合窓口となるシステムとして、さらなる改善に取り組みたいと考えており、今後とも、必要な情報や機能について皆様からのご要望、ご提案をお願いする次第である。(了)

※1 インシデント=事故が発生するおそれがあると認められる事態
※2 運輸安全委員会 船舶事故ハザードマップ http://www.mlit.go.jp/jtsb/hazardmap-koukai.html
● 船舶事故ハザードマップに関するご意見・ご要望は運輸安全委員会ホームページ(http://www.mlit.go.jp/jtsb/)の
「ご意見・お問い合わせ」からお願いします。

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