Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第317号(2013.10.20発行)

第317号(2013.10.20 発行)

編集後記

ニューズレター編集代表(総合地球環境学研究所名誉教授)◆秋道智彌

◆早くも10月なかば。秋も深まりゆく時節となった。ふりかえれば、この夏は猛暑のなか、ゲリラ豪雨や竜巻が多発し、9月には台風18号が近畿地方を中心に大雨をもたらした。豪雨や洪水をもたらす要因は複合的である。地球温暖化の影響から、優勢な太平洋高気圧の発達、ラ・ニーニャ、ダイポール・モード現象などがその要因として指摘されている。こうしたなか、地球全体の気候変動と局所的に発生する異常気象を統合的に解明する研究は現在進行中の課題である。
◆米国の国際太平洋研究センター(IPRC)のK・ハミルトン所長には、1997年以来、日米の研究者が協力して地球の気候変動の解明に取り組んできた経緯と今後についてご寄稿いただいた。安全保障や経済、学術面での日米協力はつとに知られているが、IPRCによる日米連携は地球全体の気候変動に関する知見に大きく貢献することはまちがいない。IPRC所属の日本人若手研究者も着実に育っており、近い将来が楽しみである。政府による資金面での支援の継続が望まれる。
◆9月に近畿地方を襲った豪雨で京都の観光地である嵐山が被害を受けた。おなじころ、沖縄の石垣島にいたわたしは尖閣列島周辺海域で台湾のマグロはえなわ漁船と石垣のマグロ一本釣り船が衝突する事故を知った。台湾船の船長が自らの不注意を認めたとの報道があったが、石垣の漁民は同年5月に発効した日台漁業取り決め以降に、台湾船が日本の領海に数多くやってきたことに理不尽なおもいをしたと打ち明けてくれた。国土交通省の金子栄喜氏と吉岡照夫氏は本号で、船舶事故についての事故情報とハザード情報を提供するシステムの意義について力説されておられる。去る9月27日に伊豆大島沖で発生した貨物船衝突についても、操船にあたった中国人船員が逮捕された。今回発生した2件の海難事故への情報共有が望まれる。いずれにせよ、海難事故には自然と人為の両面にわたる要因が関与することを見抜く必要がある。
◆先だってIPCC(気候変動に関する政府間パネル)は地球温暖化が人為起源であることを明確に謳った。二酸化炭素削減は1997年の京都議定書締結以来の大きな目標であるが、ポスト石油時代におけるシェールガスや天然ガスによる船舶のエネルギー利用は大きく期待できそうだ。九州大学大学院総合理工学研究院の高崎講二教授の提案を熟慮し、海洋大国としての日本が天然ガス・エネルギー利用の推進役になればと願わずにはおれない。
◆最後に、今年の異常気象による災害で被災された方々へのお見舞いと、伊豆大島沖で犠牲となられた方々のご冥福をお祈り申し上げたい。それとともに、1997年が地球のエネルギー問題を考える節目の年であったことを忘れずにいたい。(秋道)

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