◆平成23年3月11日14時46分は、日本列島に住む私たちにとって永遠に忘れられない瞬間である。突然、人々の平穏な日常生活を奪ったマグニチュード9.0にも及ぶ巨大な「東北地方太平洋沖地震」と東北から東関東の太平洋沿岸を襲った巨大津波、更に、福島第一原子力発電所の崩壊と放射性核種の拡散という三重の大災害は人類全体にとっても未曾有のものであった。この悲惨な東日本大震災から、はや1年近い月日が経過した。しかし、官民の総力をあげた努力にもかかわらず、未だ多くの方々が困難な生活を強いられている。このような状況にあっては、人の絆と未来への希望こそが、痛み、苦しみを乗り越えて復興に向けた活動を長期にわたり可能にする力となる。◆今号では石巻市長の亀山 紘氏に石巻復興協働プロジェクト事業、なかでも最先端のバイオテクノロジーを活用するマリンバイオマスタウン構想を、宮古市長の山本正徳氏には復興計画の三本柱となる「すまいと暮らしの再建」「産業・経済復興」「安全な地域づくり」について語っていただいた。文部科学省の井上諭一氏には、こうした活動を科学技術振興の面から支援する「東北マリンサイエンス拠点形成事業」について解説していただいている。東京大学でも大槌町の国際沿岸海洋研究センターの復興と学術調査船淡青丸の後継船の建造に向けて関係諸機関との協働体制を強めている。◆ここで、本誌134号に掲載された、大槌町 山崎三雄町長(当時)の夢を引用させていただきたい。「......先人が切り開いてきたこれまでの漁業の発展を思えば、経験と知恵を巧みに働かせることにより、これまでとは趣を異にする発展が期待されるものである。......赤浜地区にある東京大学海洋研究所は、その設置からすでに30年を経過した。これまでの調査研究成果は水産業振興に大きく貢献してきてもいる。豊饒の海。進取の気概。卓越した経験と技能。すばらしい智の集積。そして蠢き続ける「協働」は、必ずや確かな未来へ繋がっていると信じる。その可能性は、眼前の太平洋を凌ぐほどだと、声を大にして言える。小さな町。しかしながら、「小粒でもきらりと光るまち」がひと皮むけてのスタートとしたい。そのための挑戦である。」 この夢をしっかり共有し、実現してゆこうではないか。それこそがかけがえのない人生を永遠に奪われた人々の願いを叶えることにもなるのだと思う。(山形)
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