◆東日本大震災から半年以上が経過した。本号のキーワードは「リスク」、すなわち危機である。危機は個人のレベルから家族、会社や集団、地域、そして国家や国際社会まで多様な次元で存在する。われわれは直面するさまざまな危機をどう乗り越えるのか。東京大学地震研究所の佐竹健治さんは、今回の大地震・津波発生のメカニズムを海底水圧計のデータをもとに解析をおこなった。そして釜石沖の水深1,000m、1,600mに設置された計器の解析から大津波発生のメカニズムを明らかにした。さらに日本列島周辺に数百台の海底水圧計を配置する構想を提案されている。このアイデアは列島におけるリスク回避の方策として傾聴すべきだ。地震津波の予測は東大だけが担当しているのではない。気象庁、国土交通省はじめ、東北大学、米国の海洋大気局など国内外の観測ネットワークの連携によるものであることを承知しておきたい。◆横浜国立大学大学院の角 洋一さんは東日本大震災による福島第1原子力発電所の事故を踏まえ、事故原因の徹底的な解明なしに今後の危機管理は不毛に終わると指摘されている。さらに、包括的な立場から海事・海洋産業における危機管理と安全性の確保を提唱されている。まさかとおもう事態の発生は人間ならだれしも経験することにちがいあるまい。都合の良い「想定」に安住して危機に対処する安直さだけは避けなければなるまい。◆海上自衛隊幹部学校の吉川尚徳さんは、太平洋における中国の海軍力増強の動向を踏まえて、将来における日本国の安全保障と危機管理について警鐘を鳴らされている。中国を脅威とみるのではなく、国際関係のなかで相互に共存できる政策を追求すべきとの提言である。重要なことは地震津波や海事産業、国家戦略など多様な局面で向き合うべきリスクに対応するため、さまざまな分野の人間と組織がスクラムを組むことではないか。「つながろう」は大震災を経験した日本の教訓であるはずだ。(秋道)
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