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オーシャンニューズレター

第25号(2001.08.20発行)

第25号(2001.08.20 発行)

海岸での体験学習に向けて

edutainments.net 代表、東海大学海洋学部研修員◆堀口瑞穂

子供たちの体験学習が盛んに行われるようになっているが、残念ながら、海岸は危険であるというイメージがあるため体験学習のフィールドとして敬遠されているのが現状だ。しかし、安全に海岸を楽しむ体験学習の実現は可能であり、プログラムの組み方次第では非常に魅力的フィールドになり得ると考える。

近年、体感する<体験学習>が盛んに行われています。しかし海岸での体験学習の事例は他のフィールドでのそれに比べあまり聞きません。具体的なプログラムが少ないこと、コーデネートする人材が絶対的に足りないこと、また海岸での体験学習は危険というイメージが強いことなどが普及しにくい原因として聞かれます。それでは具体的なプログラムが準備されていなくては効果的な体験学習はできないのでしょうか。また、コーディネーターを見つけることはそれほど難しいのでしょうか。そして海岸での体験学習は本当に危険なのでしょうか。ライフセービング活動や海に暮らす人々との交流を通して得られた経験を元に考えてみました。

1)プログラム例~オリジナル海岸マップ作成

――海岸でのプログラムの一つとして、マッピングをお勧めします。事前に集めておいた海岸についての情報を元に、実際に歩きながら観察し、自分の地図に現地での情報を書き込んでいきます。興味の対象は一人ひとり異なるかもしれませんが、教室に帰った時、異なる対象をレイヤーとして重ねる事で、新しい発見が生まれます。生物の生息分布と海岸の地形や地質の分布を重ねることで、それぞれの生息環境が見えてきます。

2)コーディネーター~地元民への協力要請

――海岸線には必ず漁業者がおり、青年団や観光協会も存在し、最近では環境保護活動をしている団体も多く、大抵の地域には郷土史家がいます。これらの方々を探すことはそれほど難しいことではなく、問題は目的に合った協力者を得ることです。より具体的な協力を依頼をする方が協力する側も情報や資料を提供しやすい場合が多いです。

3)リスクマネジメント~リスクアセスメント

――自然環境下で活動する際、リスクマネジメントは非常に重要な概念です。自然環境下での活動が危ないのではなく、危険を認識する能力を持たずに活動することが危ないのです。逆を言えば、危険に対しての教育を受けていれば、大抵の危険は回避することが可能なのです。それには、自然環境への基礎的な知識に基づき、状況を客観的に捉え、最も安全にトラブルを回避する方法を導き、実際の行動に移すための、個々の観察力・想像力・決断力・行動力とお互いの協力が欠かせません。

そこで、海岸での体験学習としてリスクアセスメントをお勧めします。自然環境下での様々なトラブルに対し、チームで協力し安全に回避する方法を考え検証するリスクアセスメントは海岸に限らず、様々なフィールドや日常のシーンでも有効な経験となります。

また、マッピングとリスクアセスメントを組み合わせたプログラムも効果的です。事前の情報収集を元に海岸マップを作り、その中にハザードレイヤーを設けることで、アセスメントとマッピングの二つのプログラムがつながり、学習に深みを与えます。

4)まずは大人が海岸線へ

――海岸線は多様な要素が絡み合い形成されている特殊な環境です。海と陸が出会う場所として、人を魅了してやみません。それゆえ海岸は体験学習のフィールドとして非常に魅力的な場所です。海岸での安全な楽しみ方を体験することは、フィールドを問わず、自然環境との関わりについて学ぶための素地になると考えます。海岸を体験学習のフィールドとして選ぶために、まずは大人が海岸線を訪れ、海岸に打ち寄せる知の波を肌で感じることで、より実践的な体験学習の時間を子供たちに提供できるはずです。(了)

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