Ocean Newsletter
第25号(2001.08.20発行)
- 東京大学海洋研究所教授◆徳山英一
- よこすか市民会議代表◆片桐信治
- edutainments.net 代表、東海大学海洋学部研修員◆堀口瑞穂
- ニューズレター編集委員会編集代表者 (横浜国立大学国際社会学研究科教授)◆来生 新
海洋文化を地域から
~国際海の手文化都市・横須賀の「よこすか市民会議」の活動~
よこすか市民会議代表◆片桐信治
横須賀市は1997年に市制90周年を迎え、その都市像を「国際海の手文化都市」としたが、私たち『よこすか市民会議(YCC)』は、まちづくりボランティアグループとしてその都市像にふさわしい"未来と世界に向けて、海洋を軸とした夢と広がりのあるまちづくり"を提唱してきた。今年で5年目を迎えるが、ここに過去4年間の活動実績を紹介したい。
1997年から継続実施の「よこすか海洋フェア」
首都圏の三浦半島の中ほどに位置し、基地・軍港のイメージがどちらかといえば強い横須賀市は、実は、三方を海に囲まれ、海と深いかかわりのなかで特色ある歴史と文化を育んできた。その横須賀で、「21世紀・よこすか発・海へ」を合言葉にして、われわれの活動は産声をあげた。市制90周年に「1997年プレ海洋フェア」として次の4つの行事を開催した。ジュニアヨット教室、東京湾オープンレガッタ、猿島のわかめオーナー制度(種付けと刈り取り)のほか、以降、恒例となる国際海の手半島シーサイドウォークと黒船クルージングを1,000人規模で行った。
さらに、翌1998年はちょうど国際海洋年(Year of the Ocean)であったので、これにちなんで本格的に活動を展開することとして、「よこすか海洋フェア'98」を正式スタートさせた。これは21世紀に向けて人類が食料、資源エネルギー、交通運輸、気象、環境、健康等の面でますます海と共生することが求められるとの認識を、市民レベルで持つようにしようという狙いによる。数十人から千人まで大小規模の多様な企画を追求
以後の各年の活動概要は別表にまとめて表示しておいた。市民レベルの活動だけに手作りの企画によっているが、地元に立地する海洋関係研究機関に視察会受け入れをお願いしたり、首都圏に残された貴重な自然である三浦半島の磯の学習会等のフィールドワークや東京湾クルーズでも船上でのアトラクションもメニュー化して、親子でも楽しく参加できるように工夫を凝らしている。昨年の「よこすか海洋シンポジウム2000」なども秋の行楽シーズン真っ只中の日曜日に開催したのだが、おかげさまで約300人もの聴衆が集まった。これまでの行事が実現でき今年の企画がたてられたのも、第一級の海洋関係者をはじめ後援団体ならびに協賛企業の協力が得られたからにほかならないので、この誌面を借りて心から感謝とお礼を申し上げたい。
わが国も含めて世界的に海洋資源の利用と保全はますます重要になってくるであろう。にもかかわらず、私たちは海に囲まれていながら海洋についてどれだけのことを知り、経験しているだろうか。たとえば、わが国200海里排他的経済水域は世界6位の広さを有しており、日本は海洋大国といえるのである。海洋は未知の分野も多いが、最近のすばらしい科学的知見をわれわれ一般市民は意外と知らないのではなかろうか。
産官学とならんで民力の充実を
海についてのそうした認識をわれわれ一般市民レベルでも培っていく必要がある。産官学、すなわち産業界、官界(行政)、学界がそれぞれ個別に、あるいは横断的に取り組んでいくことが必要であると、各方面で繰り返し叫ばれている。しかし、こと海洋問題については、われわれ一般市民もこれらに伍して、生活者レベルでの民力が重要であると思う。民間産業の民ではなく、市民の民である。
私たちの活動はまだ緒についたばかりであるが、海洋文化について広く深く勉強し、その重要性を発信していきたい。私達は海洋の生態と恩恵について、身近な地域から重層的に海を知り、体得し、暮らしの視点から海洋の保全と活用を考えていきたい。そして全国各地の同様のグループともどしどし交流を図りたい。
6月26日には「森は海の恋人・1000年の森を創る会」のキックオフ・ミーティングを開催したが、今後も一層内容を充実させて活動していきたいと考えている。それでも、海はあまりに大きく不可解で全体像を理解するのが難しい。だからなおさら、産官学の手助けを必要とする。ましてボランティア活動の財源の確保など大きな問題である。われら市民グループが主体となっての活動をもっと知っていただきたいし、暖かい手をさしのべていただきたい。
海洋問題を扱っていると大変楽しいことが多い。しかし、海は私たちに厳しさを教えてくれる。でも、海は人間を癒してくれるし、多大の恩恵をもたらしてくれる。ローカルからグローバルへ、そして未来へ。
来年は何をテーマにするか、嬉しい悩みが待っている。(了)
![]() 「よこすか海洋シンポジウム2000」は、「21世紀に向けて─海洋からのメッセージ」をテーマに開催された。写真は「海と会話ができてますか?」と題されたパネルディスカッションの模様(2000年11月26日、於:よこすか芸術劇場小劇場) |
![]() 海の自然環境学習会の猿島におけるフィールドワーク。(2001年3月24日) |
■「よこすか海洋フェア」取り組みの概要 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
( )内は参加者で概数。*は有料 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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