Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第228号(2010.02.05発行)

第228号(2010.02.05 発行)

編集後記

ニューズレター編集代表(東京大学大学院理学系研究科教授・研究科長)◆山形俊男

◆今年はユネスコに政府間海洋学委員会(Intergovernmental Oceanographic Commission; http://ioc-unesco.org/)が創設されて50年の節目の年である(本誌202号「ユネスコ政府間海洋学委員会(IOC)と日本の海洋学コミュニティ」北沢一宏著参照)。これを記念する事業が各国で企画されている。この委員会はIOCの略称で知られるが、巷間では国際オリンピック委員会と間違われることが多いのは残念である。IOCは海洋科学に基づいて海洋の様々な国際問題を扱う唯一の国連の組織(現加盟国135カ国)であり、これまで海洋研究の促進、観測システムの整備、海洋情報のサービス、途上国の能力開発支援などを活発に行ってきた(本誌195号「ユネスコ政府間海洋学委員会の過去から未来を展望する」G.L. Holland著参照)。国内対応体はユネスコ国内委員会におかれたIOC分科会であり、わが国はIOC設立時から一貫して執行理事会メンバー国に選ばれるなど中心的な役割を担ってきた(http://www.mext.go.jp/unesco/005/003.htm)。昨今、地球環境問題や気候変化・変動の問題における海洋の重要性が認識されるようになって、IOCへの期待はますます高まっている。わが国にとって、実績のある海洋科学知識を活用して世界海洋の管理を主導してゆくことは極めて重要であり、50周年の機会にIOC分科会と内閣府の総合海洋政策本部との連携を強化することが望ましい。
◆本ニューズレターの編集にあたっては、森、川、海を総合的にとらえるオピニオンや島の問題を意識的に取り上げるようにしている。今号では蔵治光一郎氏に「漁民の森」にとって、今、何が必要なのかを考察していただいた。「緑の砂漠」化を防ぎ、海を豊かにするには間伐こそが必要であるとする氏のオピニオンに瞠目した読者も多いのではないだろうか。敷根忠昭氏には昨年7月の皆既日食で一躍着目された鹿児島県の離島からなる十島村の顛末記とこの出来事が島に与えた恩恵について寄稿していただいた。インフラ整備などのハード面だけでなく、島に住む人々の間の一体感や役場と住民の信頼関係の醸成というソフト面の重要性は島の問題を考えるにあたって貴重な視点になると思う。
◆風呂田利夫氏には今や新江戸前として店頭に並ぶ外来種二枚貝のホンビノスについて解説していただいた。157号で田口史樹氏に論じていただいたバラスト水による生物拡散の典型例である。植物相ではセイヨウタンポポ、セイタカアワダチソウ、ハルジオンなど、欧米原産の外来種がまるであたりまえのように道端で繁殖している。これらは自然の生態系を人間活動が乱した結果に他ならないが、ホンビノスについては新たな水産資源の出現とする見方もあり、この状況をどう捉えるかは難しい問題である。  (山形)

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