Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第20号(2001.06.05発行)

第20号(2001.06.05 発行)

干潟の生きものと遊ぶ

であいねっとわーく ともだち◆綿末しのぶ

広大な干潟が広がる守江湾(大分県杵築市)には、カブトガニや貴重な貝類も多数棲息しており、子どもたちにとっても、自然にふれることができる絶好な遊び場となっている。しかし一方で、漁港の整備などによって、干潟の生き物たちが次第に減りつつあるのは残念なことだ。

カブトガニのつがい
守江湾の首捻(くびひねり)に産卵に来たカブトガニのつがい

私の住む大分県杵築市は九州の国東半島の付け根にあり、市の南東には八坂川、高山川が流れ込む守江湾があり、カブトガニが棲息する広大な干潟が広がっています。

私たちの「であいねっとわーく ともだち」では、杵築の自然、歴史、文化を見なおし、親子で遊び、感動しよう!をモットーに活動していますが、なかでも守江湾の干潟は私たちの絶好の遊び場になっています。

春は潮干狩り。97年にあった大洪水以来、ハマグリがたくさん湧き、ハマグリの潮干狩りということで、市民だけでなく大分県下からも大勢の人が来るようになりました。貝が専門の先生に、ここのハマグリはほとんど絶滅した貝合わせに使われていた日本の在来種と教えていただき、一同びっくり。その時は、ハマグリを始め、オキシジミ、カガミガイ、ソトオリ、イチョウシラトリなど20種を超える貝を見つけました。

夏はカブトガニの産卵観察。産卵は7月から9月の大潮の満潮の前後2時間で、杵築でもカブトガニはめっきり少なくなり、来ないときも多いのですが、そんなとき子どもたちは、アカテガニやベンケイガニの産卵を見つけたり、星座や流星観測をしたり、カブトガニの折り紙を折ったり、カブトガニを招く歌や踊りを創って遊んでいます。産卵に来たカブトガニを見つけたときは大騒ぎです。写真を撮ったり、岸の上からエールを送ったり、つがいが移動するたびに右に左に......、来年も来てねと見送ります。

坂川河口干潟
杵築城より望む八坂川河口干潟

夏にはカニの観察と磯遊びもあります。カニの観察は、八坂川の河口干潟でハクセンシオマネキ、コメツキガニ、チゴガニ、ヤマトオサガニなどいつでも観察できます。ハクセンの名前の由来とか、なぜ右が大きいのと左が大きいのがいるのとか、横でなく縦にも走るマメコブシがいるとか、子どもたちの興味は尽きません。磯遊びは守江湾の美濃崎漁港に隣接している浜が最適で、ヒザラガイ、アメフラシ、カイメン、マツカサガイ、タマキビ、イシダタミ、ムラサキイガイなど、たくさんの海の生き物たちに出会いました。カニばかり追いかけている子や石をひっくり返して潮溜まりの魚を採る子、岩についたヒザラガイやマツカサガイを採ろうと格闘する子などなど、潮が満ちてくると又違った磯の姿がみえてつい時間を忘れてしまいます。

秋はカブトガニの1齢幼生の観察会。満潮の夜、海面を浮いたり沈んだり漂う1cmに満たないかわいいカブトガニの赤ちゃんに出会えます。すくってサンプル瓶に入れると、くるくるとまわりながら浮き沈みする半透明の身体に歓声があがります。

毎年、干潟で遊んでいると、大水が出る度に干潟の砂質が変わり、そこに棲んでいる生き物たちが替わるのがわかります。昨年はまったくいなかったイボキサゴがたくさん見つかったり、カブトガニの幼生がほとんどいなくなったり、思いがけないところで元気に棲息している幼生に逢えたりと変化に富んで、飽きることはありません。

守江湾の中には堤防ができたり、漁港が整備されたりと構造物ができ、アマモなど湾内の海藻類が激減してしまいました。それに呼応するようにカブトガニが減り、エビやアサリが採れなくなりました。今では沖の刺し網にも魚が掛からなくなったと漁師が嘆いています。私たちが活動を始めて5年の間にもいつとは知らされず、遊び場にしていた3カ所の海岸がなくなってしまいました。

美濃崎の海岸 美濃崎の堤防
かつては磯遊びでにぎわった美濃崎の海岸。現在はごらんのような風景となっており、もう磯遊びはできなくなった。

しかし、干潟の生き物たちが減ってきているとはいえ干潟で冬を越す鳥の大群をみると、杵築もまだまだ捨てたものではないなと思います。今年も杵築の素敵な干潟や海がなくなってしまう前に、親子でしっかり遊んでおきます。杵築をお通りの節はぜひご連絡ください。楽しい干潟をご案内します。(了)

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