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オーシャンニューズレター

第18号(2001.05.05発行)

第18号(2001.05.05 発行)

「水産基本法案」等の国会上程

インフォメーション

現在開催中の第151回国会に、農林水産省は、水産基本法案および海洋生物資源の保存及び管理に関する法律(いわゆるTAC法)・漁業法等・漁船法の改正案を上程した。これまでのわが国の水産政策は、昭和38年制定の沿岸漁業等振興法に従って展開されてきた。しかし、国連海洋法条約の締結、日韓及び日中漁業協定の発効等によって、わが国の水産も本格的な200海里体制へ移行し、周辺水域の資源悪化等による漁業生産の減少や漁業従事者の減少・高齢化といった状況変化の中で、今後の水産政策の基本理念を明確化し、政策を再構築するために、水産基本法を新たに制定し、それに関連する既存法制度の整備を図ることとなった。

水産基本法案は、水産物の安定供給の確保と水産業の健全な発展という基本理念と、国・地方公共団体の責務とを定める。また、水産に関する施策の総合的かつ計画的な推進のために水産基本計画制度を設け、水産物の安定供給の確保に関しても、水産資源の適切な保存・管理、水産動植物の増殖・養殖の推進、水産動植物の生育環境の保全・改善等の基本方針を定め、水産業の健全な発展に関しては、効率的かつ安定的な漁業経営の育成、水産加工業及び流通業の健全な発展、漁村の総合的な振興、多面的機能に関する施策の充実といった施策の基本方針を明らかにした。さらに水産政策審議会の設置が定められた。

TAC法改正案では、わが国周辺水域において漁業資源の悪化が進みつつある現状を踏まえて、すでに存在する漁獲量の総量管理制度に加えて、漁獲努力量の総量管理制度を創設する。漁獲努力量管理制度においては、農林水産大臣が管理の対象となる海洋生物資源ごとに基本計画を定め、その動向、対象となる採捕の種類、海域、期間、漁獲努力可能量、実施すべき施策等を定め、それを受けて都道府県知事が都道府県計画を定めて、都道府県別の漁獲努力可能量、実施すべき施策を定める。知事は条例で独自に特定海洋生物資源について漁獲努力可能量等を定めることができる。この漁獲努力可能量等の管理のために、大臣または知事は、漁獲努力量等の公表、助言、指導、勧告、採捕の停止または停泊命令等の措置を講ずる。さらに、漁獲努力可能量の対象となっている海洋生物資源について、漁獲可能量等の対象となっているものと同様の協定制度を設け、漁獲努力量管理の対象となっている海洋生物資源の採捕を行う者に対して、対象となる漁獲努力量にかかる漁ろう作業を行った時に、漁獲努力量等を大臣または知事に報告することを義務付ける。これに加えて、現在、一律、暦年方式となっている漁獲可能量につき、海洋生物資源の種類ごとにその漁業時期を考慮した方式に改められた。

漁業法改正案では、資源管理強化、効率的・安定的な漁業経営体の育成、漁業権管理の適正化の観点から、特定区画漁業権の内容たる区画漁業に、新たに垂下式養殖業を加えること、定置漁業免許につき、優先順位が第1順位または第2順位とされる法人として、定款に株式譲渡につき取締役会の承認を要する旨の定めがある株式会社が追加されたこと、特定区画漁業権、第一種共同漁業権の分割等において、漁業協同組合は総会議決前に、組合員のうち、当該漁業権の内容たる漁業を営む者であって、当該漁業権にかかる地元地区または関係地区の区域内に住所を有するものの3分の2以上の同意を得なければならないこととした。その他、指定漁業の許可等の特例の見直し、公域漁業製委員会の設置、漁業協同組合の総会の部会制度について定められた。

漁船法改正については、漁業者の負担軽減、規制緩和の推進等の観点から、建造許可制度、漁船登録制度につき、対処動力下船の区分見直し、登録票検認期日の延長、指定認定期間、指定検認機関等が定められた。

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