Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第167号(2007.07.20発行)

第167号(2007.07.20 発行)

海洋立国日本を目指して

公明党 衆議院議員◆大口善德(よしのり)

海洋基本法の制定により、海洋に関する施策を集中的かつ総合的に推進するための総合海洋政策本部が
内閣官房に置かれ、内閣総理大臣が本部長となって政治的リーダーシップを発揮できる体制が整った。
海洋政策担当大臣も置かれ、政府一体となって、海洋資源の開発および利用、環境保全、安全の確保、
産業の振興など海洋に関する幅広い問題に、より戦略的に取り組めるようになった。

海洋基本法制定

四面環海のわが国は、多くの恩恵を海から受け、海に守られて発展してきた。その海洋では今、国連海洋法条約、リオ地球サミットの行動計画(アジェンダ21)などにより新しい法秩序および政策が導入され、各国が自国の排他的経済水域等をそれぞれ管理しつつ、人類全体の利益のために協調して海洋環境の保全、持続可能な開発、平和的管理に取り組む時代が到来した。

わが国は、この条約のもとで認められた資源豊かな、世界で6番目に広い排他的経済水域等の保全および管理、開発利用に努めるとともに、国際社会においてわが国のすぐれた科学技術力、経済力や国際法研究の成果等を生かして、よき海洋秩序形成に先導的な役割を果たし、国際協力を推進しなければならない。わが国も海洋基本法を制定し、縦割りでなく政治的リーダーシップによる総合的な海洋政策の推進体制を整備し、新たな海洋立国を目指すべきとの問題意識に立ち、昨年4月、海洋政策研究財団の尽力により「海洋基本法研究会」(座長:石破茂 衆議院議員)が発足した。

この研究会には自民・公明・民主各党の有志の国会議員のほか、学識経験者や産業界の代表、関係各省庁の局長、課長等多くの海洋関係者が集い、私も参加させていただき、10回に及ぶ会合を重ね、昨年末に「海洋政策大綱」と「海洋基本法案の概要」をまとめた。また公明党においても同時並行で海洋基本法制定プロジェクトチーム(座長:高野博師 参議院議員)を発足させ、私も事務局長として取り組んできた。

安倍総理も、本年1月26日の施政方針演説で、「海洋および宇宙に関する分野は、21世紀の日本の発展にとって極めて大きな可能性を秘めており、政府としても、一体となって戦略的に取り組んでまいります」と述べられた。こうして法制定の機運は整い、自民・公明・民主の各党による「海洋基本法案」は、本年の通常国会に提出され、4月3日衆議院で可決、4月20日には参議院で可決成立し、意義深き7月20日から施行されることになったのである。

総合海洋政策等の司令塔の確立

海洋基本法の制定により、今後、最終かつ最高の総合調整機能を持つ内閣官房に、海洋に関する施策を集中的かつ総合的に推進するための海洋政策の司令塔ともいうべき総合海洋政策本部や海洋政策担当大臣が置かれ、総理大臣が本部長となって政治的リーダーシップを発揮し、政府一体となって、海洋に関する問題に、より戦略的に取り組むことができるようになる。

また、海洋に関する問題は海洋資源の開発および利用、環境保全、安全の確保、産業の振興など幅広い範囲に及んでおり、本部には海洋に関する重要事項について審議し、本部長に意見を述べる機関として、有識者からなる「参与会議」が設置される。

海上保安庁の役割

わが国は、四方を海に囲まれ海上輸送等の安全確保、海上秩序の維持、海洋権益の保全など海洋の安全を確保することがとくに重要である。今回、海洋基本法および安全水域法が成立し、海上における法の執行機関である海上保安庁が果たす役割がますます大きくなっている。しかし現状は、装備面では巡視船艇あるいは航空機は昭和50年代に建造・取得したものが多く、老朽・旧式化しており、犯罪の取り締まりや海難救助活動に支障が生じている。昨年度から、老朽・旧式化の進んだ巡視船艇および航空機について、高性能な巡視船艇、航空機への代替整備を緊急かつ計画的に進めているとのことだが、さらに一層整備を促進すべきである。

また、要員不足のために、沿岸部で365日24時間、その機能を果たすことができない状況があり、即応体制が手薄にならないよう必要な人員の確保にも早急に取り組むべきだ。

海を知ることの必要性

海洋研究開発機構の視察。写真左より松あきら参議院議員、高野博師参議院議員(党海洋基本法制定PT座長)、大口善徳衆議院議員(同事務局長)、富田茂之衆議院議員(財務副大臣)

わが国においては、「海を知る、海を守る、海を利用する」ことにつきバランスのとれた政策が必要である。とくに、海を知ることは、他のあらゆる海洋政策を展開する上の基盤であり、科学調査研究体制を強化すべきである。

本年2月、わが党の海洋基本法制定プロジェクトチームで、独立行政法人海洋研究開発機構の本部を視察した。海洋については未知の領域が多いが、この機構はスマトラ沖大地震の震源域における世界初の本格的科学調査など、海洋科学技術のフロンティアに挑戦している。

また、同機構は、水深2千5百メートル、海底下7千メートルと世界最高の科学掘削能力を有する地球深部探査船「ちきゅう」を建造・所有しており、巨大地震発生メカニズムの解明等のため、本年の9月から、南海トラフを掘削することになっており、さらに、有人で世界最高の探査能力を持つ深海潜水船「しんかい6500」を用いて、世界最先端の研究を実施している。

なお、同機構の地球シミュレータの地球温暖化予測の成果が国際的、社会的にも注目を集めている。

日本船籍および日本人船員の確保

貿易立国であるわが国において、日本籍船および日本人船員の確保も重要である。日本人の船員は5万7千人から2千6百人と、70年代に比べてわずか5%弱しかいない。また、日本籍船の総数は、ピークであった72年の1,580隻から95隻にまで減少している。貿易量の99.7%を外航海運が担っているわが国において、非常時における対応を含め、わが国の経済、国民生活にとって不可欠の安定的な国際海上輸送を確保する上で、現状は大変憂慮すべき事態である。

日本籍船、日本人船員を確保するためには、国際競争条件の均衡を図ることが必要であり、08年度税制改正において、国際標準となっているトン数標準税制の導入を実現しなければならない。

東シナ海を平和・協力・友好の海に

本年6月18日、私は海洋基本法関係の与党議員の一人として東シナ海周辺海域を海上保安庁のファルコン900に搭乗し、視察した。いま、日中両国は戦略的互恵関係の構築に努力し、東シナ海問題につき、適切に処理するため、「東シナ海を平和・協力・友好の海」にすることを共通認識として、本年秋の共同開発の具体的方策の両首脳への報告を目指し、協議中であるが、話し合いを加速させ、交渉の成果を強く求めたい。(了)

第167号(2007.07.20発行)のその他の記事

ページトップ