Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第167号(2007.07.20発行)

第167号(2007.07.20 発行)

編集後記

ニューズレター編集委員会編集代表者(総合地球環境学研究所副所長・教授)◆秋道智彌

◆7月20日は「海の記念日」。いうまでもなく、「海洋基本法」の施行される記念すべき日となった。1992年のリオサミットにおけるアジェンダ21計画の立ち上げ、1994年の国連海洋法条約発効など、20世紀終盤から21世紀にかけて海をめぐる国際情勢は大きく胎動してきた。このようななかでの海洋基本法施行はまことに意義深いといわなければならない。本誌で、西村康稔氏、大口善徳、長島昭久氏の三衆議院議員が異口同音にその意義を主張されている。三氏は、本法成立の生みの親となる「海洋基本法研究会」を超党派で推進してこられた中核メンバーである。同会における笹川陽平会長の「海を守る日本」論発言は、長島氏も指摘されるように、けだし名言というべきだ。島国根性からの脱皮、海洋政策の統合化のメッセージも、単なる掛け声だけで終わってはならない重要な提案であろう。

◆海と日本人の関わりを、もうすこしながい時間幅で考えたらなにが見えてくるのか。冒頭インタビューで梅棹忠夫氏は、人間が海にたいしてかならずしも十分に適応してこなかった。海洋立国論、海洋国家論は、そのうえでの議論であるべきという見解だ。海の広さ、海の深さを見据えるならば、海の支配をめざす政策や開発が進められるべきではないだろう。

◆日本の、そして世界の海の未来をになうのは若い世代である。子どもたちに、海についての興味と関心を植えつけることも、重要な政策課題とすべきだ。青い海と入道雲。照りつける夏の日差しのなか、麦わら帽子をかぶった少年が浜をかけぬける。このような里海のイメージを抱かれる諸氏は現代の日本にどれくらいおられるだろうか。未知の深海への探求とともに、ありふれた身近な海の保全や賢明な利用を、広範な分野の賛同をえて推進したいものだ。

◆この6月22~23日、神奈川県江の島で「生き物文化誌学会」の学術大会が開催された。大会のテーマは「海~なぜ人間は海にひかれるのか」であった。大会で開催されたシンポジウムのテーマも、なぜ人間は海にひかれるのかであり、学会長のわたしが司会をつとめ、海と人間の関わりを中心として多分野の問題について議論した。そのなかで、人間が海にふれるさいの身体感覚が重要であることが指摘された。潮の匂い、波音、水にふれる皮膚の爽快感。そして、子どもの時から海に慣れ親しむことの大切さが提起された。海と言えば海水浴やマリンスポーツだけしか考えないのはおかしい。秋の海、冬の海にもそれぞれ魅力がある。地域との結びつきも強調された。海洋基本法の施行日からスタートするさまざまな試みを、上からだけでなく下ないし地域から発信することが大きな鍵となる。そのための、全国的なネットワークづくりを今日から考えようではないか (秋道)

第167号(2007.07.20発行)のその他の記事

ページトップ