Ocean Newsletter
第115号(2005.05.20発行)
- 文部科学省科学技術・学術政策局長◆有本建男
- 長崎大学名誉教授◆田北 徹
- 衆議院議員◆長安たかし
- (株)渋谷潜水工業◆田中藤八郎
- ニューズレター編集委員会編集代表者(総合地球環境学研究所教授)◆秋道智彌
読者からの投稿 1 メガフロートを後押しする国家戦略の必要性
衆議院議員◆長安たかし浮体工法(メガフロート)で羽田再拡張事業の応札を目指していた造船会社は、結局入札そのものに参加できなかった。旧来からの「空港の建設工事は建設業でなければできない」という固定観念に囚われていては、わが国にはいつまでたっても新しい技術は育たない。
むしろ国家戦略の中にメガフロートのような新しい技術を位置付けて、世界に先駆けて実証の場を与えることが大切だと考える。
羽田空港再拡張事業の入札の欺瞞
現在の羽田空港が能力の限界に達しつつあることから、新たに4本目の滑走路を整備し、空港処理容量を増加させる再拡張事業が計画されています。新滑走路は2009年の使用開始を目指しており、この3月に入札が行われました。しかし、入札とは言っても応札するのは1つの共同企業体(JV)のみであり、形式だけのものと言わざるを得ません。このような形になってしまったのは、国土交通省によって厳しい入札条件が課されたことが大きな要因です。
造船業界を排除する入札条件の設定
具体的には、入札しようとする企業は建設業として認可された高い評価を有していなければならないうえ、入札に際しては空港土木、港湾土木、舗装、鋼構造物の四工種について各2社、最低8社でJVを構成することが必要とされたのです。浮体工法(メガフロート)で応札を目指していた造船会社は、埋め立て工法での応札を目指すゼネコン業界の協力を得ることができず、結局入札そのものに参加することさえできなかったのです。
新しい海洋技術の発展を支援する国家戦略を
今回の羽田再拡張事業に関する国土交通省の対応を見ると、依然として旧来からの「空港の建設工事は建設業でなければできない」という固定観念に囚われているように思えてなりません。羽田再拡張事業は、陸上空港の建設ではなく、海上空港の建設ですから、浮力という海洋に特有な属性を利用した浮体工法という新しい技術を用いることに躊躇する必要はありません。ましてや、浮体に関する技術は日本が世界の先端を走っている分野でもあるわけです。私は、前例がないからしり込みする、あるいは既得権益のある業界に仕事を流すというやり方では、技術立国日本の将来は危ういと考えています。わが国は長らく「技術は一流だが戦略がない」と言われてきましたが、今こそ国家戦略の中にメガフロートのような新しい技術を位置付けて、世界に先駆けて実証の場を与えることが大切だと考えています。ベンチャー・スピリッツが必要なのは起業家だけではありません。わが国がもう一度活力と成長力のある国家として甦るためには、政府もまた新しい領域に勇気を持って踏み込んでいくことが必要なのではないでしょうか。(了)
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