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オーシャンニューズレター

第102号(2004.11.05発行)

第102号(2004.11.05 発行)

インフォメーション
米国海洋政策審議会が最終報告書を提出

世界最大の200海里水域を持つアメリカでは、2000年海洋法により設置された海洋政策審議会が米国の新しい海洋政策について審議していたが、本年9月に「21世紀の海洋の青写真(An Ocean Blueprint for the 21st Century)」と題する海洋政策報告書を議会と大統領に提出した。同審議会は2001年9月に初会合を開催して以来精力的に活動を行い、2003年までに米国内各地で18回の会議を開催して、国民、専門家の意見等を聴取した上で本報告書をまとめたものである。本年4月にpreliminary Reportが発表され、これに対し沿岸州の知事をはじめとする多くの関係者から提出された意見を踏まえて、このたび最終報告書が提出された。大統領は、これを受けて90日以内にその勧告を実施するため総合的・長期的な米国海洋政策を議会に付託することになっている。

同審議会は、新国家海洋政策のために持続可能性、信託管理(Stewardship)、生態系に基づく管理など13の原則を掲げ、現行の米国の海洋及び沿岸管理システムでは、このような原則を効果的に実施して長期ビジョンを実現することは不可能であるとし、212項目にわたって具体的な勧告を行っている。同審議会が勧告する重要な行動は、次のとおりである。

  1. 海洋管理体制の改善
    * 大統領補佐官を議長とする国家海洋会議を大統領府に設置
    * 海洋政策に関する大統領諮問会議を設置
    * 米国海洋大気庁(NOAA)の強化及び連邦政府機関のプログラムの段階的な統合による連邦政府機関の構造改善
    * 国家海洋会議の促進、支援のもとに、地域海洋会議設置のための弾力的、かつ、任意のプロセスの開発
    * 連邦管轄の沖合い水域における調整された管理体制の構築
  2. 健全な科学と賢明な決定
    * 海洋研究投資の倍増、海洋調査の新分野の立ち上げ、これらを支援するため必要な先進技術と近代的インフラの形成
    * 国家統合海洋観察システムと国家監視ネットワークの施行
  3. 教育-未来の基礎
    * 組織的、効果的な公式、非公式プログラムによる海洋関係教育の改善
  4. 特定の管理課題
    * 沿岸と流域の管理及び双方の連結
    * 水質汚染(特にノン・ポイント汚染)削減の測定可能な目標設定、及びそれらを達成すための奨励策、技術支援、法執行その他の管理手段の強化
    * 地域漁業管理会議システムの改善、専用入漁権(dedicated access privileges)の使用の検討を通じ、評価と配分の分離による漁業管理の改善
    * 国際的活動に従事するため国連海洋法条約に加盟
  5. 実施
    * 連邦及び州レベルの海洋及び沿岸管理の改善を支援するための、沖合いの石油・ガス開発及び新しい活動からの収入の未割当分による海洋政策信託基金の設立

このように同審議会は、骨太かつ具体的に、また、包括的で詳細に米国海洋政策について勧告しており、次はこれを受けた大統領がどのような新海洋政策を議会に提出するかが注目されている。

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