Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第102号(2004.11.05発行)

第102号(2004.11.05 発行)

編集後記

ニューズレター編集委員会編集代表者(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻教授)◆山形俊男

◆各地に大きな災害をもたらした記録破りの豪雨と猛暑が去り、ようやく秋冷の候となったと思いきや、超大型の台風が次々に日本列島を襲う。被災地の一日も早い復旧を願わずにはいられない。最近の地球温暖化傾向の顕れか、熱帯太平洋ではまたまたエルニーニョ発生の兆しもあり、世界の海の異常はまだまだ続きそう。海は異常気象の面でも、産業の上でも世界と日本を直結する道であることを痛感する。

◆中山氏にはユニタール広島事務所における長期プロジェクト<海洋と人間の安全保障>について寄稿いただいた。悩める水惑星<地球>の環境を守り、適切な開発と調和させるには発展途上国の指導的な人材の育成が欠かせない。こうした地道な国連の活動が大きく開花する日を確信する。

◆丸山氏にはフィリピンの海難事故の調査に基づき、伝統的な小型船バンカボートの事故が多いという、意外な特徴を報告いただいた。先進国の援助と途上国のニーズとの不整合という一般的な問題がここにもある。適切な現地データに基づく援助により、途上国との真の友好が築かれることを再確認したい。

◆今号には読者投稿が一件。海事の経験豊かな矢嶋氏は外航における日本人船員の減少を憂え、わが国の伝統ある海技継承の危機を叫ぶ。国境を越える経済と国家安全保障のバランスは難しい。しかし、これからの海事社会が如何にあるべきか、またそれを担う人材育成をどうするか、傾聴すべきオピニオンである。

◆世界最大の排他的経済水域を持つ米国では海洋政策審議会が21世紀の海と沿岸域の管理、科学、教育体制の青写真とすべき最終報告書を大統領に提出した。政策実現を支援するために、新規の海底油田やガス田の開発などから信託基金の導入も提案しており、かなり具体的な提案である。中国の胎動も著しい。21世紀の海の管理と科学の推進を目指し、人材育成の面でも大きく動き出した。青島海洋大学を2002年に中国海洋大学に改組し、名山ラオシャンの近くに第3キャンパスの建設を決定した。この10月には内外から7,000人以上が参加し盛大に建学80周年を祝ったところである。

◆今号から山形が偶数号を担当する。グローバルな視点から海洋国家日本の未来像を読者諸氏とともに考え、発信してゆく場としたい。(了)

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