【W20活動レポート】第七回:議長国インドがまとめたG20の力強いジェンダー平等へのコミットメント
G20の公式市民エンゲージメントグループとして、女性のエンパワーメントについて政策提言を行うW20。W20活動レポート第七回は、W20の政策提言がG20首脳宣言にどのように反映されたのかを振り返る。
経済発展を続ける東南アジア諸国では、女性起業家の活躍が目立つ。最大の理由は日本と異なり企業などに雇われて働く機会が少ないことだ。特に農村部では、起業は女性が経済力を持つための唯一の選択肢と言える。
昨年3月に東京で開催された国際会議Women20(W20)は、女性の経済的なエンパワーメントや女性起業家支援の重要性を強調する共同宣言を発表し、G20議長国のトップである安倍晋三首相に手渡している。笹川平和財団はW20をスポンサーとして支援した上、女性起業家支援に重要な「ジェンダー投資」に関する分科会の企画運営にも関わった。東南アジアでは、ミャンマー、インドネシア、タイ、カンボジア、フィリピンなどで、女性起業家の支援を行っている。
ジェンダーイノベーション事業グループ・松野文香グループ長は「途上国の女性、取り分け農村部では雇用主が身近にないため、起業は経済力を得るための現実的な方法です。女性の経済力が上がることで、家庭や地域、社会におけるジェンダー平等につながります」と話す。
今回はインドネシアの首都ジャカルタと郊外で現地取材を行い、この地域で働く女性起業家や、彼女たちを支援するエンジェル投資家、起業家支援の仕組みを取材した。高等教育を受け外資系企業などで勤務経験を持つ女性たちが、同じ国に住む貧しい女性たちの地位向上のため、ビジネスを通じた社会変革に取り組んでいる。
社長を辞めた翌年、マリコさんは車を売り払い、スーツやスカートを捨てた。今はスニーカーにジーンズ姿で電車に乗ってどこへでも出かけていく。アシスタントには、地方出身のインドネシア人女性を新たに採用した。
自身が日本とインドネシアの双方にルーツを持つことも、マリコさんは強く意識している。 「自分は日本に助けられた。大学留学の際、日本政府の奨学金をいただいたこと。JACリクルートメントで差別のない企業文化の中、働くことができたこと。そして日本社会で差別されなかったこと。日本で受けた恩をインドネシアの国づくりに貢献することで返していきたい」
この価値観は笹川平和財団が東南アジア各国で行う女性起業家支援やジェンダー投資の考え方とも通じている。取材に同行した同財団ジェンダーイノベーション事業グループの矢橋佑華さんは、こう話す。「同じ国で生まれ育っていても、途上国・新興国では富裕層と下層の格差がものすごく大きいです。富裕層は日本人が想像もつかないような豪華な暮らしをしていますが、そのすぐ近くに裸足でその日暮らし、銀行口座も持たない人たちがいます。もし、彼・彼女たちの暮らしに多少のゆとりがあって、栄養状態がもっと良かったら長期的にものを考えたり、もっと学ぶことができるようになるかもしれません。女性起業家の支援を通じて女性が経済力を持つことができると、子どもの教育や栄養状態が向上します。だから『お母さんの笑顔』を基準に貧しい人たちが恩恵を受ける事業に投資する、マリコさんの考え方は素晴らしいと思いますし、民間の立場から社会的課題の解決に挑戦する方と共に持続的な社会を支えていきたいです」
(写真 Agus Sanjaya撮影)