随想一筆
地方レベルで目印を繋ぐ

中村唯
それから約4年、中村は手がける事業の難しさを語る。
「インド北東部の実像を日本に分かってもらうことが、一番難しい。『インド北東部』というと、あたかもインドの一地方と同じようなものだと思われてしまう。そもそもインドは一国であるのが奇跡のような、巨大で多様なところ。北東部も、実はそれ自体でASEAN(東南アジア諸国連合)にも匹敵するような、まさに多様性の小宇宙。また、デリーから遠く、北東部の中もフライトや車を乗り継がなければならない。辿り着くのに、どれだけ苦労することか…。ひと言で説明することが難しい地域だから、理解してもらうことも難しい」
その分、得られる喜びも大きい。
「インド内外の団体で、我々のような活動をしているところは非常に少ない。競合相手がいないので、一流の人たちと一緒に独占的に仕事ができる。もう1つは、私が意識的にやってきたことですが、東北とは山形国際ドキュメンタリー映画祭で、沖縄とはインパール平和資料館の開設で繋がるなど、通常の「中央」と「中央」の交流ではなく、日本とインドの地方の取り組みを繋げることができた。それが大きな喜びです。『周縁』の人々が一緒に取り組むことによって、学び合い、刺激を与えあうことがたくさんある。私たちもそれによって大きな気づきや恩恵を得ることができる。両者を市民レベルで繋げることができて初めて、日本の財団として意義があるのではないでしょうか」
=敬称略