Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第42号(2002.05.05発行)

第42号(2002.05.05 発行)

編集後記

ニューズレター編集委員会編集代表者(横浜国立大学国際社会学研究科教授)◆来生 新

◆「かしこにはレバイアサン生あるもののなかの最大の者大海に岬角(みさき)のように横たわりかつは眠り、かつは泳ぎ、はたまた動く岡かと見まがわれる鰓に海を呑み、息に海を吐く」(ミルトン失楽園)。ヨブ記に、己が後に光る道を残せば、淵は白髪をいただけるかと疑われる、と記された海の怪物Leviathanは、大きな鯨の意味でも用いられる。鰓に海を呑み、息に海を吐くその巨大な存在感は、古来人間を畏怖させもし、征服の対象として多くの血を沸かせた。また、人の血であがなったその身は余すところなく人に用いられても来た。IWC年次会議にあわせた鯨特集である。

◆日本人にとって、とりわけ戦後の食糧難時代の貴重な動物性蛋白源としての鯨になじんだ編集子の世代は、鯨をめぐる議論に、味覚の記憶という人間存在の根底に由来する感情移入をしてしまう。反捕鯨の主張も同様に鯨という圧倒的な存在感を持つ生き物に対する感情移入から自由ではない。ご寄稿をいただいた森下氏、グリーンピースそれぞれに代表される議論の対立が、感情論と科学的議論の峻別によって、人間と鯨の新たな調和のあり方についての合意に向かうことを期待したい。それにしても、集団座礁に遭遇する地方自治体のご苦労が並々ならないことが、大浦町の村田氏のご寄稿でよく分かる。七郷賑わうといわれた鯨の寄り付きが、漂着ごみとして処理されざるを得ない現状の改善に一工夫が必要と考える。読者諸氏には17号の角本氏の『鯨が寄りついた日』、5号の森下氏の 『今なぜ捕鯨問題か』の再読をお勧めしたい。(了)

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