Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第68号(2003.06.05発行)

第68号(2003.06.05 発行)

編集後記

ニューズレター編集委員会編集代表者(横浜国立大学国際社会学研究科教授)◆来生 新

◆「六月のみなとに船がしろき炎を」(河合凱夫)。最近、港湾関係者の会話の中に「スパチュウ」という言葉がよく出てくる。酎ハイがお好きで、海の関係者に人気のものならさっそく試してみようと思われる方は、まず本号の津守オピニオンをよくお読みいただきたい。「スパ中」も口当たりが良く、飲めば元気になる可能性が高いことがわかる。しかし、すべての酒において、飲酒時の高揚感は飲み過ぎの後の苦しみの裏面に過ぎない。それが百薬の長となって、飲む人の健康そのものの改善につながるような、賢明な飲み方が大事であろう。港湾関係者それぞれの立場での厳しい自己改善の努力と一体化した賢明な「スパ中」利用を期待したい。

◆酒のもたらす多幸感と依存の関係は、政府による産業規制(=保護)とそれがもたらす非効率の温存とどこか似ている。ストレスが強いほど、多幸感をもたらす薬物をあえて用いても、上手にストレスを発散させる必要が生ずる。しかし、それは厳しい自己認識と自己管理、薬物の効果に対する冷徹な計算の上ではじめて可能な技で、それを行う能力があってはじめて酒を百薬の長と言い切る「賢さ」の主体となりうる。長島オピニオンのトン数規制の過去の効果の評価。生物生産に積極的に関与できない漁業にとっての、省人、省エネ、付加価値向上の手段の重要性の指摘。それらと一体となった、きめ細かな新たな漁船構造規制提言の「賢さ」を評価したい。

◆太田オピニオンは、海図を素材に、今日の多くの日本人の海に関する精神の一断面を興味深く描写する。イギリスの作家D.H.ロレンスは優れた詩人でもあるが、彼の晩年の詩に"Theysay the sea is loveless"という詩(LastPoems,1932)がある。彼は、人々がそう言うにしても、海には生命と愛と喜びが満ちていることを賛歌する。海を知り、海とともに生きるために海図に目を向ける必要があるのは若い人ばかりではない。われわれもイギリス人と同じく海洋国民であることを思い出そうではないか。(了)

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