Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第607号(2026.07.20発行)

新たな防災気象情報の運用開始

KEYWORDS 高潮/波の打上げ高/時系列情報
気象庁大気海洋部気象リスク対策課沿岸防災情報調整官◆川口和哉

気象庁では、高潮警報等を含む新たな防災気象情報の運用を開始し、警戒レベル2~5に対応した住民の避難行動等との関連を明確にして発表することとした。併せて、潮位予測に波の打上げ高予測を加えた高潮予報や、時系列情報等の運用も新たに開始した。これらにより、高潮浸水被害からの的確な避難の判断など、高潮警戒・避難体制の一層の充実・強化を図っていく。
防災気象情報の改善
防災気象情報とは国・都道府県等が発表する気象、地震、津波、火山噴火等に関する情報です。これらのうち気象庁と関係機関が発表する気象に関する防災気象情報を改善し、2026(令和8)年5月29日から運用を開始しました。この改善は、国土交通省水管理・国土保全局と気象庁において、2024(令和6)年に取りまとめられた「防災気象情報に関する検討会」の提言を踏まえ、防災関係機関や住民の避難等の防災対応が一層効果的なものとなるよう実施したものです。
住民が災害発生時にとるべき避難行動に対応する避難情報等は、内閣府の『避難情報に関するガイドライン』1により5段階の「警戒レベル」に整理されています。各警戒レベルに相当する河川氾濫・大雨・土砂災害・高潮に関する情報は、以前は警戒レベルとの対応が情報ごとに異なり、分かりにくい点がありました。また、河川氾濫については、それまで予測技術が十分ではなく、特別警報を運用していませんでしたが、近年の河川水位の観測・予測技術の進展により特別警報の運用が技術的に可能となってきました。さらに、警戒レベル4相当情報は、自治体や住民が避難指示や避難の判断に用いる重要な情報ですが、河川氾濫、大雨、土砂災害及び高潮に関する情報で統一された名称がありませんでした。
新たな防災気象情報では、河川氾濫・大雨・土砂災害・高潮に関する警報・注意報を5段階の警戒レベルと整合させ、災害発生の危険度に応じて発表します。具体的には、これら警報等の名称への警戒レベルの数字の付記、河川氾濫に関する特別警報の新設、警戒レベル4に相当する危険警報の創設など、情報の名称や体系を見直しました(図1)。これにより、住民の皆様がとられる避難行動等の判断をより一層支援できるようにします。
高潮の情報については、以前の高潮特別警報、高潮警報がいずれも警戒レベル4相当であったのに対し、新たな高潮特別警報は警戒レベル5相当の高潮特別警報として運用するとともに、警戒レベル4相当の高潮危険警報を新設しました。高潮特別警報は、以前は伊勢湾台風級2の台風や同程度の温帯低気圧による高潮を対象として発表していましたが、今般、新たに潮位等の高さの発表基準を設けました。また、高潮危険警報の発表基準は、その基準を超えると浸水被害のおそれがある状況となる高さに設定し、レベル4高潮危険警報、レベル3高潮警報、レベル2高潮注意報は浸水被害のおそれがある状況からそれぞれ一定期間のリードタイムをとって発表します。

■図1 5段階の警戒レベルに合わせた新たな防災気象情報

高潮の共同予報・警報の創設
以前の高潮の予報・警報は、気象庁が全国の海岸を対象として、台風等接近時の気圧の低下に伴い海面が吸い上げられる効果と、台風等の強い風に伴い海水が海岸に吹き寄せられる効果による海面の高さ(潮位)の上昇を予想して行っていました。一方、実際の高潮による浸水は、潮位の上昇に加えて、海岸に押し寄せた波が海岸・海底の地形の影響や堤防等の施設に打ち上がる効果も合わさって発生するものであり、この「波の打上げ」の効果も考慮することにより、より精緻で実態に即した高潮の予測が行えることが指摘されていました。
国土交通省では、波の打上げ高を予測するシステムを開発し、都道府県と協力して全国の海岸で実証を進めてきたところ、今般、潮位や波浪の予想を行う気象庁、波の打上げ高の予想を行う国土交通省、打上げ高水位の観測結果や沿岸の地形・施設等の情報を有する都道府県が共同し、より精緻な高潮の予報・警報を行う共同予報・警報の制度を創設しました(図2)。高潮の共同予報・警報は、国土交通大臣が高潮により重大な損害が生じるおそれがあるとして指定した海岸(以下、高潮予報海岸)を対象として行います。これにより、高潮に対する警戒・避難体制のさらなる強化を図ります。
なお、高潮予報海岸以外の海岸では、以前と同様、波の打上げ高を考慮していない気象庁の潮位予測による高潮の予報・警報を行います。また、高波による遭難や沿岸施設の被害等の重大な災害の発生のおそれがあるときは波浪警報を発表して警戒を呼びかけます。高潮と波浪の警報を合わせて沿岸防災の対応に活用していただきたいと考えています。

■図2 新たな高潮の共同予報・警報

新たなプロダクト「時系列情報(明日までの警報等の見通し)」の運用開始
上記の改善と同時に、新たに「時系列情報(明日までの警報等の見通し)」の運用を開始しました。この情報は、発表時からその翌日までについて、注意報・警報等の基準を超える現象の発生や情報の発表が見込まれる時間帯、発表対象区域・時間帯の雨量、風速、波高、潮位等の予測値を記載します。この情報は市町村等を単位として、翌日までの3時間ごとの時間幅で記載し、毎日4回(5時、11時、17時、23時)更新し、気象庁ホームページでいつでも最新の情報をご覧になれます3。高潮予報海岸では潮位に加えて波の打上げ高水位も記載します。レベル3、レベル4等の情報発表の有無やその継続が見込まれる時間帯を確認できますので、事前の備えや避難の準備等にご活用いただきたいと考えています。
以上、高潮防災に関し、2026(令和8)年5月29日からの高潮警報等を含む防災気象情報の体系の変更、高潮の共同予報・警報の創設、時系列情報(明日までの警報等の見通し)の運用開始についてご紹介しました。高潮警報等については、警戒レベル2~5に対応した住民の避難行動等との関連を明確にして発表するとともに、高潮予報海岸では潮位予測に波の打上げ高予測を加えた、より精緻な高潮予報・警報を行います。これらにより、高潮浸水被害からの的確な避難の判断など、高潮警戒・避難体制の一層の充実・強化を図っていきます。(了)
※1 『避難情報に関するガイドライン』 https://www.bousai.go.jp/oukyu/hinanjouhou/r3_hinanjouhou_guideline/pdf/hinan_guideline_r8_1.pdf
※2 伊勢湾台風は、1959(昭和34)年9月26日から27日にかけて伊勢湾・紀伊半島沿岸を中心に高潮による顕著な被害をもたらした。死者4,697名、行方不明者401名。
※3 全国の時系列情報(明日までの警報等の見通し) https://www.jma.go.jp/bosai/warning_timeline/

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