Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第490号(2021.01.05発行)

持続可能な海洋経済と国際連携推進に向けて〜国際ウェビナー ビデオメッセージ〜

[KEYWORDS]ハイレベル・パネル/洋上風力/海洋プラスチックごみ
内閣総理大臣◆菅 義偉

海洋の保全と持続可能な利用を通じた経済振興を目指して2018年に立ち上がった「持続可能な海洋経済の構築に向けたハイレベル・パネル」には日本を含む世界14カ国の首脳と国連事務総長特使の15名が参加している。その成果として発表された首脳文書の幅広い公表を目的として国際ウェビナー「持続可能な海洋経済の構築に向けたハイレベル・パネル政策提言:持続可能な海洋経済と国際連携推進に向けて」が開催された。本稿は、国際ウェビナーの開催にあたって菅義偉内閣総理大臣から寄せられたビデオメッセージである。

今回、私も参加する「持続可能な海洋経済の構築に向けたハイレベル・パネル」は、我が国を含む14か国の海洋国家の首脳の連名にて、「持続可能な海洋経済のための変革」と題する首脳文書を発出しました。「ハイレベル・パネル」として、海洋の保全と持続可能な利用について包括的に取り上げる首脳文書の策定は、初めての試みです。ソールベルグ・ノルウェー首相と、レメンゲサウ・パラオ大統領の指導力に、心より敬意を表します。
我が国は、今回発出した「首脳文書」の趣旨に沿う海洋基本計画を定めており、持続可能な海洋経済に向けた取組を進めてきています。そして、この計画の下、将来世代においても、豊かな海洋資源を享受することができるようにするために、我が国の全ての海域を持続可能な形で管理することにコミットしています。今後もその着実な実施に向けた取組をしっかりと進めてまいります。
また、持続可能な海洋経済を実現するためには、海洋由来の再生可能エネルギーの導入などを通じ、気候変動問題に対し、野心的な行動をとることも重要です。私の政権は、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする、「カーボン・ニュートラル」の実現を目指すことを宣言しました。我が国は、イノベーションを通じて「経済と環境の好循環」を加速するとともに、洋上風力発電などの海洋の力を活用することにより、パリ協定が目指す脱炭素社会の実現に向けた国際社会の取組を主導していきます。
さらに、海洋の保全のためには、国際社会で連携した海洋プラスチックごみへの対応も不可欠です。我が国は、2019年のG20大阪サミットで「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を打ち出しました。我が国は、2050年までに、海洋プラスチックごみによる追加的な汚染ゼロの実現を目指す、この「ビジョン」の実現に向けて、大阪に本部を置くUNEP-IETC(国際連合環境計画・国際環境技術センター)をはじめ、関係機関とも連携しながら、技術支援などを、積極的に行っていきます。今回発表した「首脳文書」が、持続可能な海洋経済の構築に向けた羅針盤となり、豊かな海を将来の世代に継承していくための具体的な行動につながることを期待します。(了)

2020 年12月3日に開催された国際ウェビナー「持続可能な海洋経済の構築に向けたハイレベル・パネル政策提言:持続可能な海洋経済と国際連携推進に向けて」における菅総理による挨拶の様子
  1. 国連環境計画国際環境技術センター:International Environmental Technology Centre, United Nations Environment Programme

注釈 : 漁業資源の枯渇や海水温上昇、海洋プラスチックごみの増大など、様々な危機に瀕する海洋問題に対処し、海洋の保全と持続可能な利用を通じた経済振興を目指し、2018年にノルウェー政府が主宰し、「持続可能な海洋経済の構築に向けたハイレベル・パネル」(図1参照)を立ち上げました。同パネルには、世界14カ国の首脳と国連事務総長特使の15名が参加し、当初は安倍晋三内閣総理大臣(当時)が参加し、2020年の秋からは、菅義偉内閣総理大臣がパネルのメンバーとして政策対話に参加してきています。3 年にわたる活動の成果を首脳文書となる政策提言(図2参照)としてとりまとめ、2020年12月2日に発表しました(https://www.oceanpanel.org/ocean-action/transformations.html)。
その政策提言の幅広い公表を目的とし、2020年12月3日に、外務省および(公財)笹川平和財団海洋政策研究所の共催、在京パラオ大使館、ノルウェー大使館の協力により、国際ウェビナー「持続可能な海洋経済の構築に向けたハイレベル・パネル政策提言:持続可能な海洋経済と国際連携推進に向けて」が開催されました(開催概要はhttps://www.spf.org/opri/news/20201211.html 参照)。
本稿は、国際ウェビナーの開催にあたって菅義偉内閣総理大臣から寄せられたビデオメッセージです。

■図1: 「 持続可能な海洋経済の構築に向けたハイレベル・パネル」のメンバー
「持続可能な海洋経済の構築に向けたハイレベル・パネル」の事務局作成資料より
■図2 : ハイレベル・パネルによる首脳文書「持続可能な海洋経済のための変革」の概要
(菅総理の首席交渉官(シェルパ)を務める小野啓一・外務省地球規模課題審議官による国際ウェビナーでの基調講演資料より)

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