Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第490号(2021.01.05発行)

編集後記

帝京大学戦略的イノベーション研究センター客員教授♦窪川かおる

♦新年おめでとうございます。2021(令和3)年は、本誌初となる総理からのメッセージで明けます。昨年12月開催の国際ウェビナー「持続可能な海洋経済の構築に向けたハイレベル・パネル政策提言」で菅義偉内閣総理大臣は、わが国の持続可能な海洋経済に向けた取り組みのうち、洋上風力発電などによる「カーボン・ニュートラル」の実現および海洋プラスチックごみの追加的な汚染ゼロの実現を目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」について述べられています。国際社会の取り組みを主導する日本の海洋政策に大変心強い年の始まりです。
♦本年1月から「国連海洋科学の10 年」が始まり、世界の海洋科学の研究機関・研究者が連携して、海洋科学の推進に取り組む。そして「私たちの望む海」として、きれいな海、健全で回復力のある海、生産的な海、予測できる海、安全な海、万人に開かれた海、夢のある魅力的な海、の社会的成果が提起されている。これらの実現に「変革的」海洋科学の挑戦が期待される、と東京大学大気海洋研究所の牧野光琢教授は詳解されている。この10年には、海洋政策として学際的に議論すべきことが多い。また日本は、アジア太平洋地域と共に、海洋問題の解決、さらには海洋文化を尊重し共有するのが重要だという。
♦初春を、新型コロナウイルス感染症の波の下、with corona の生活で迎えた。昨年2月のダイヤモンド・プリンセス号の約1カ月に及ぶ横浜港への寄港は、感染症侵入を防止すべき沿岸国法益と海上交通の安定という国際法益の対立を浮き彫りにしたという。それは世界で200万人いる船員のうち数十万人が数カ月にわたり上陸できない事態に象徴される。日本は貴重な経験の当事国として、海洋法の新たなルールの必要性を提言すべき立場にあるので、先導的な役割を果たして欲しいと、本誌共同編集代表で同志社大学教授の坂元茂樹氏は論考されている。
♦今年は水産政策の変革が本格始動する。(国研)水産研究・教育機構の改組は、水産政策の柱となる水産資源回復と水産業の成長産業化に対応する。同機構の宮原正典理事長より水産業の現状と本年から始まる中長期計画の目指すところを解説いただいた。現状は厳しいが、国際競争力強化と温暖化や自然災害への対策の同時進行が計画されている。一方、日本周辺海域の生産性は高く漁場は近い。同機構は自治体や各地の漁業者と協働し、既存の水産業の発展に資する研究開発を着々と進めている。日本の水産研究と水産教育に期待が高まる。(窪川かおる)

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