Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第45号(2002.06.20発行)

第45号(2002.06.20 発行)

編集後記

ニューズレター編集委員会編集代表者 ((社)海洋産業研究会常務理事)◆中原裕幸

◆密輸というと薩摩藩の抜荷貿易やら長崎出島や平戸のオランダとの通商貿易の陰の部分をふと思い出し、密航というと明治政府の大立者が幕末に海外への雄飛を夢見て企てた史実を、そして領海侵犯というと古くは倭寇の跋扈した東シナ海や明治政府が時の普仏戦争に中立宣言をだしたうえで明治5年に太政官達により3海里領海を設定した経緯などが、連想ゲーム的に脳裏に浮かんだりする。

◆しかし、こうした歴史的好奇心と戯れているほど悠長な話ではなく、近年の問題はその緊迫度が際立って異なる。何しろ、銃撃戦にまで発展した不審船問題に象徴的に表れているように、ことは国家主権が侵され、人命・財産が脅かされる事態である。四面環海の島国であるわが国は、実は日頃からこうした問題を抱えていることを正視していかなくてはいけないであろう。

◆折りしもW杯サッカー真っ盛りの6月。フーリガンの入国阻止などが巷の話題にのぼっていたが、個人の自由との関係で、国が出入国をどれだけ規制できるものかと考えつつ、本号の後記を書くめぐり合わせになった。しかし、「海と法秩序」をテーマに特集のかたちで掲載した各ペーパーには、陸揚げされなければ密輸の未遂にもあたらないという解釈のもつ問題点、あるいは密航の背後に巣食う黒幕組織まで捜査を可能にする体制の充実の必要性など、考えさせられる指摘がふんだんに盛り込まれている。また、ロケット砲などの重装備による領海侵入はひょっとしたらもっと頻繁に起こっているかもしれないわけで、それへの対策も避けて通れない。かといって有事法制について、その必要性は理解できても、十分な国民的論議と合意が求められていることも当然であろう。

◆朝鮮半島の情勢如何によっては、大量の難民の圧力が韓国や中国のみならず日本にも重大な影響を及ぼさないとも限らない。そのとき、われわれはどのように対処するのか?できれば避けたいような課題だというのが正直なところだが、これも直視しなければなるまい。それにしても、海は地球環境を左右するとともに、食糧や資源、交通輸送、レクリエーションや癒しの場など多くの恵みを人類にもたらしてくれる一方、他方で面倒な課題も突きつけてくるものだと今更ながら腕組みしなおしているのだが、読者の皆さんはどのように感じ、どのようにお考えだろうか?(了)

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