Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第366号(2015.11.05発行)

第366号(2015.11.05 発行)

編集後記

ニューズレター編集代表(総合地球環境学研究所名誉教授)◆秋道智彌

◆私は岩手県中部の海岸部にある大槌町に1999年以来通っている。大槌は東日本大震災で被災した。朝9時過ぎに京都を出て、新幹線、釜石線を乗り継いで大槌に到着するのは夕方で、ほぼ8時間を要する。震災直後は京都を早朝に出て秋田まで飛行機で行き、盛岡まで新幹線で行き、そこから手配の車で大槌にはやはり夕方に着いた。
◆日本大学理工学部の伊澤 岬名誉教授と轟 朝幸教授が震災を機に、地方へのアクセスを可能にする水上飛行機ネットワーク構想の実現を提言されている意味がよくわかる。以前、南紀白浜から羽田まで飛んだことがあるが、今はない。白浜からさらに遠いクジラの町太地や世界遺産のある熊野に行くにはそれなりの時間が必要だ。私は海岸だけでなく、湖もその対象として検討する必要があると考えている。法的な諸問題があるにせよ、東北の復興、観光、緊急医療などの多面的利用を是非とも国に考えてもらいたいものだ。
◆伊豆半島の先端部にある下田も考えてみれば、伊豆急行に乗っても時間がかかる。西伊豆に行こうとすれば、沼津からバスに揺られての長旅となる。下田海中水族館の浅川 弘氏が指摘されておられる通り、下田でアカウミガメが産卵することを地元民やウミガメ研究者などは周知していたが、うわさが広がり、ウミガメとかかわる人の層も種類も増加しているという。本誌でも静岡県の浜名湖以西から愛知県伊良湖岬にかけて広がる表浜におけるアカウミガメの産卵場の保全について田中雄二氏の報告があった(本誌第303号、2013.3.20発行)。ウミガメの気持ちになって考え、子どもたちにその思いを伝え、保全プロゲラムを継承していくためにも、市当局だけでなく水族館が積極的な指導性を発揮した環境保全と環境教育モデルつくりの拠点となることを願わずにはおれない。
◆東京オリンピックを5年後に控え、いまさらではあるが、東北で開催できなかったものか。地震や津波の天災だけでなく、地域紛争が多発する今日、新しい形でのスポーツ振興を環境との調和、コスト節約型の先進国モデルを世界に提示すべきと常々考えてきたが、東京湾をアピールしない手はない。東京湾内の「海の森」はオリンピック開催時にどれほど変わってくるか今から楽しみだ。東京都海上公園計画課の佐藤敏之氏は東京都「海の森倶楽部」の設立にかかわられ、企業、市民を巻き込んだ運動の広がりに期待を寄せておられる。かつての江戸湾には豊かな海があった。当時なら海の森といえば、おそらく藻場を思い浮かべた。だが、埋め立てによる工場建設や港湾施設の拡大、汚染などを通じて海の森は消えたが、最近では復活の動きがある。海中に魚やエビ、貝類が戻り、海の森に鳥や虫たちが集まってくる。そんな海の景観がオリンピックで来日する外国からの客人を楽しませてくれる夢を見たい。(秋道)

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